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第31話 解明

 一夜が住む家へと辿りついた俺たちは、一夜をベッドに寝かせ、家の中を見て回った。

 敷地も相当な大きさで、かなり大きな家だった。

 家の中には診察室があり、そのままの状態で残されていた。

 診察室……じゃあ、ここは圭の両親の……。圭と一緒に住んでいたのか。

 今は使われる事もないのだろうが、きちんと整理されていた。いつでも開けられるようにと思っての事だろう。


「咲耶、診察室を少し調べてくれないか」

「分かりました」

「頼んだぞ。俺は外を見て来る」

「はい。等為、可鞍」

「「分かりました。手伝います」」

 俺は、外へと向かったが、侯和も外にいる事だろう。

 おそらく、あいつも探しているんじゃないだろうか。

 それは期待ではないだろうが……。

 圭が一夜に知られる事もなく、『気』を持っていったとしたなら、何処かにその痕跡が残っているはずだ。

 まあ、例え見つけたとしても、自分がそれをどう扱えるかは分かってはいないだろう。

 ……諦めの方が強いかな……。

 俺に頼る事も躊躇っているようだしな。

 馬鹿な事をしたと言われるのも、嫌なんだろう。

 俺が何を使って精霊と契約したのかに興味を示した侯和。

 それでも俺を見ている限りでは、俺に不足は見えないのだろう。

 だが……侯和自身は不足ばかりだ。

 その差に落胆したか……。そうじゃないんだけどな……。

 それなら、それは違うと証明してやる。

 だから……逃げるなよ。侯和。


 外から診察室を眺めている侯和を見つけた。

 その目線は動く事はなく、ずっと見つめている。

 呪術医としての思いを重ねているようだった。

 捨てても捨てきれないものがある……侯和はそう俺に言った。

 それでも自分一人だけではどうにも出来ない状況が、諦めを促すのだろうが……もどかしいな。

 誰かに託す事でその思いも晴らす事が出来るなら、それでいいと他力に頼る。

 何処からか現れる『奇跡』を願う……か。


 暫く診察室を眺めていた侯和だったが、俯くと、踵を返して歩き始めた。

 侯和も庭を見て回る気か……。

 俺は、そっと侯和の後をつけた。

 侯和は、庭を抜けると林の中へと向かった。

 ……随分と詳しいようだな。

 こんなに暗くても、その場所が分かっているようだ。迷いもせずに、歩を進めて行く。

 そして、足を止めるとその場に屈んだ。

 ……何を……見つけた……?


 侯和は、手を触れようと伸ばしたが、それに触れるのをやめて立ち上がった。

 ……なんだ……?

 侯和が戻って来る。

 俺は、侯和から見えないように隠れ、侯和が過ぎ去るのを待った。

 侯和の姿が見えなくなると、俺は侯和が手を触れようとしていたものを確認しに行く。

 ……これは……。

 こんな身近なところに……。

 まさか……使った訳じゃないだろうな……。

 だが……どちらにしても、敷地内にあるのだから、あの診察室には……それがあるのかもしれない。

 俺は、診察室へと戻った。

 咲耶と一夜の話し声がする。

 目が覚めたか。

 咲耶は、薬が置かれている棚から何かを見つけたようだ。

 その瓶を見た咲耶の目が、ピクリと動く。

 ……咲耶も気づいたか。

 小さく開いた扉から俺が見ている事を、咲耶は分かっている。

 俺は、小さく頷きを見せた。咲耶はゆっくりと瞬きを返して、理解した事を俺に示した。

 一夜はこの事を知っているのか……。

 そして圭は知っていたからこそ、だったのか。


 咲耶は、手に取った瓶を一夜に見せて言った。


「これ……幻覚剤ですよ。何の為に……どなたが作られたのでしょう……?」


 侯和が手を触れようと見ていたのは、その材料になる植物だった。

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