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第25話 詮索

「……面白いな」

 笑みを漏らした後に、侯和はそう言った。

 一夜の目が、強い警戒を示した。

「面白い」

 またそう答えると、侯和は声をあげて笑い出した。

「おい……コウ」

 俺は、怪訝に思いながらも、侯和の真意を探ろうと、侯和をじっと見た。


 侯和の様子は明らかに変わっていた。今まで見た事のない冷たい表情を見せる。

 俺は、そんな侯和の様子に眉を顰めた。

 ……何を考えている……?


 一夜に似ている奴がいると言った後に、何となく侯和に訊いてみた。

『懐かしいんじゃないのか? コウ。仲良かっただろ。同じ階にいた時はさ』

『だってお前、彼を上に上げる為に、お前が持ってるもの全部譲ったんだもんな。だからお前は、いつまでたってもそのまんま。俺たちみたいな何にもない奴が上に行けないのは分かるけど、お前は行けたんじゃない?』

 そう言った俺の言葉に、侯和はそんな事はないと、首を横に振るばかりだった。

 侯和は、はぐらかすような態度を見せてはいたが、それでも俺は訊き続けた。

『もし……この場所に新たなブリコルールがいたとして、そいつが本当に自然環境を治癒出来る程の能力を持つ呪術医だとしたら、彼は来るだろう。他の奴はお前と彼の繋がりを疑ってる。それはお前がケイに託したものなんじゃないのか?』

 圭と言った事で、一夜は余計に気になっただろうが。

 もし侯和が思っている事が、俺が思っている事と別の事だったとしたら、一夜にとって大きな障害にもなりかねない。


 侯和の手が一夜へと伸びる。

 俺は、地に座り込んだままの咲耶へと目線を送った。

 何か事を起こす気ならば、咲耶の防御を使って……。


「随分と……自由に動けるようになったな……」


 ……侯和。

 優しくも響いた侯和の声。

 一夜へと伸ばしたその手は、一夜の両肩にそっと置かれた。

 そんな侯和の態度に、一夜の驚きは増すばかりだった。

 そして、更に侯和が口にする言葉……。

 俺の疑問も大きくなる。


 侯和との会話の中で、確信に迫ろうとする俺だったが、侯和は決して口を割ろうとはしなかった。

『繋がっていたとしたら、なんだって言うんだ?』

 開き直ったようにもそう答えていたが。

『分からないのか? それとも、(とぼ)けているのか? ケイが望む事、全て、思いの……』


「お前の望む事、全て、思いのまま……」


 やはり、その言葉が出たか。


 一夜を見ながらそう言った侯和だが、その言葉を向けているのは間違いなく圭にだろう。

 更に続いた侯和の言葉に、侯和にはまだやり残した事があったのだと分かった。いや……そういうより、一夜との出会いが侯和をそうさせたんだ。まだ出来る事があると思った事だろう。

「……やっと見つけたよ……やっと現れた……『宿』」

 震える声で侯和は、そう言葉を吐き出した。

 ……やっと見つけた、か。

 だが……。

 あの時、本心を隠し続ける侯和は、俺にこう言った。


 『判断の是非は、宿にある。それには答えない。宿がどう動くかは、俺は知らない。それに……ケイの事を知る事は出来ない』


 もう一つ……仕掛けてみるか。

 意味ありげに言った、侯和のあの言葉の真意を探る必要がある。

 守るのか、攻めるのか。


『それでも知りたいと言うなら……『彼』が来るなら、答えてくれるかも……な……?』


 それなら……答えて貰おうか。

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