表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/168

第20話 行動

 長かった。

 その時が来るまで。

 ……差綺。もう少しだけ待っていてくれ。

 お前が張った網に掛かってきている。


『大丈夫だから……貴桐さん』


 ……もう少しだ、差綺。


 もう少しで、来贅の思惑を狂わせ、奴に近づく事が出来る。奪い返す時が来る。

 ただ……その時には……。


 巡り合い……干渉せざるを得ない状況は、必然だ。

 巡り巡って、また結びつく。

 塔を見上げ、立ち止まった一人の男の姿を確認するように横目で見た。


 …… 一夜。


 新たに動き始めた時は、再会を意味するが、一夜にとっては始まりになる。

 ……悪いな、一夜。

 お前が辿り着きたいものに辿り着く為に、通らなければならない道は過酷かもしれない。

 だが……今のお前なら、その覚悟は出来ているんじゃないか……?

 圭の為に……ここに来たんだろ……? 圭を取り戻す為に。


 侯和と圭が準備を整えている間に、俺たちも準備を整えてきた。

 侯和が圭を上層に行かせる事が果たされれば、侯和に出来る事はなくなる。

 圭が来贅に近づいた時には、分離は免れないだろう。

 そこで圭の計算が狂えば、圭は戻る事が出来なくなる。

 互いに秘めた思惑を、確認した事は一度もないが。

 この塔の中で、侯和たちと俺たちの接点を作れば、同時に潰される可能性が大きくなるだけだ。

 交わるのは、最終段階でなければ、来贅の内側に入る事は難しいだろう。

 一つの思惑が狂っても、もう一つの思惑が並行していれば、必ず交差する。その時が侯和たちと俺たちとの接点だ。

 目的は同じはずだからな……。



 塔を出る前に咲耶が俺に言った。

「貴桐さん。『彼』の不足は補えていないようです。あのままでは……」

 等為と可鞍を持つ咲耶にとっては、不安要素がある事は明らかに分かる事だった。

「それでも『彼』が圭と共に上階に行ったなら、来贅は何か勘づいたかもしれないな」

「ええ。そうだとなれば、分離された時点で奪われる可能性が高いです。犠牲が増える事でしょう」

「ああ……奪われるとするなら、圭の知識体系……『彼』に不足があるなら、来贅は『彼』に手を出す事はないだろう。奴にとって必要なのは、その……『可能性』だ」

「満足のいく形になるまで……という事ですか」

「ああ。だが……」


 塔を出ようとする前に、その姿は見えていた。


「今日……やるぞ」

「干渉してきましたね……分かりました。等為と可鞍に問題はありません。貴桐さんの思うがままに」

「ふ……思うがまま、か……そうだな」

「望む事を掴む時です」

「……ああ、そうだな」


「タカ……! 悪い、待たせた」

 侯和が俺たちの元へと走ってくる。

 俺は、侯和を待ちながら、呟いた。


「侯和にも……掴ませてやろう」


 侯和が圭に託したものが『彼』の存在であったならば、あいつも信じているはずだ。

 草や木……人。それぞれに気が宿っている。そして、それが力をもたらすと……。


「……少し荒い方法だが、本音を吐き出させるには一番だ。悪いな、咲耶。一芝居頼むよ」

「構いません。それに……」

 咲耶が気掛かりなのは、何処まで干渉出来るかだろう。

「……そうだな」

「宿と継承者は繋がっていますから……不足を補う為に、現れるでしょう」

「ああ……」


 俺は、塔の前に佇む一夜をちらりと見た。

 本当に……そっくりだ。


「来るだろうな……『彼』が」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ