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第11話 主張

 侯和の姿は見つけたが、圭の姿は見当たらなかった。

 あいつも着ていた服の色は、青だった。それなら下層にいるはずだが……。

「どうかしたのか?」

 俺の目線の動きに気づいたのだろう。侯和がそう訊いた。

「いや……ここにいるのは、皆、呪術医なのか?」

「全てがそうだとは言えないかな。呪術医じゃなくても、そこに触れる事の出来る者もいる」

 そこに触れる……か。

 呪術医が使う呪術には、不足が多いと来贅は言っていた。

 という事は、人体に影響を与える事が出来る……呪術師がいるという事か。

「塔に入って日が浅い割りには、知っている事が多そうだな」

 俺はそう言って、わざとらしくも探るような目線で、侯和を見た。

「……知っているさ」

 侯和は、伏せ目がちに目線を落としながら、小さく呟いた。

 俺は、そんな侯和を見ながら、次の言葉を待った。

 物思いに(ふけ)るような侯和は、少し寂しげだった。そして目線を俺へと変えると、儚くも微かな笑みを見せて答える。

「俺だけじゃない。皆、共有してきたものが、ここに集められているんだから」

「共有ねえ……だが、お前に言った通り、お前が持っていたものを共有したようには見えなかったが?」

「一つじゃないからさ」

「まあ……そうだよな……殆どの呪術医が集められたんだからな……」

「ああ。だが、それでも限られた選択肢の中で選ぶのは、最低限でも自分にとって納得出来るものだよ」

 ……やっぱり……同じだな。

 侯和は、静かな口調で話を始めた。


「呪術医への圧力は、塔が出来る前から起こっていたものだ。それは今のように大きく影響するものではなかったが、呪術医の使命は人の命を救う事……それが叶えられる呪術医は、その知識を分け与える。それで多くの人を救う事が出来るなら、知識の共有は互いの能力を高めさせるものだった。それがいつしか、分け与えられた知識があちこちに分散して、それが誰のものかなど、分からなくなった。共有しておいて、誰のものか、なんて考える方が間違っているのかもしれないけどな……それでもそれは自分のものだと主張する事が、能力の高い呪術医だと誇れるものになる……能力の高い呪術医に、人が集まるのは当然の事で、そこに価値を求める結果がこの塔だと俺は思っている」

「それでお前は?」

「え?」

「ここに価値を求められると思っているのか? 言ってたよな。呪術医を続けたくてここに来た、と」

 侯和は、溜息をつくと、ボソッと言葉を吐き出した。


「……だったら……下層なんか選ばねえよ……」

 思っていた通り、自分で下層を選んだか。

「下層がやる事は、ペイシェントの振り分け……どの診療科で診察するかを振り分ける。そして……まだ密かに呪術医を続けている呪術医を探す事だ」

「探して……どうするんだ」

「分かって聞いているんだろ? そうでなければ、塔に入ると来ていないはずだ」

「ふん……塔に入るか、排除されるかの二択か」

「いや……もう一つある」

「もう一つ……?」

 俺は、侯和の言葉に眉を顰める。


 侯和が口にした言葉で、来贅があれ程の能力を持っている意味を知った。


「能力の高いものは、その能力を他者に移す……『分離』だ」

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