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第17話 知

 類似は類似を呼ぶ。

 それが類感呪術だ。

 そしてここには、肯定と否定が含まれる。

 そもそも類感呪術に於いての肯定とは、こうなりたくないからという防衛の為であり、否定とは、望まない結果を生む事であって、こういう事をやれば、こうなるという戒めだ。簡単に言えば、危険なものに触れれば危険に陥る。危険だと知りながらそこに手を触れるのは、その事象が起きてこその意味がある。

 その事象を起こした事が事実となり、それに基づけば同じ事象を引き起こす事が出来るという知識になるからだ。

 結果は原因に起因し、原因は結果に影響を及ぼすとは、まさにこの事であり、その結果があってこそ、その事象は成り立ち、その事象があってこそ、結果が生まれる。



「貴桐……お前は占術を使うんだったな……それなら……お前の中にあるという事か」

 来贅の目が俺に向いた。

 ……掛かった。

 そう確信したと同時に、来贅が俺を押し倒してくる。来贅に押される俺は、受け入れるようにもそのまま仰向けに倒れた。


『貴桐。使うものの意味を知りなさい』


 ああ。勿論だ、ジジイ。

 掴んだはずのものに抱いた疑念。

 本当は違うのではないかと抱えた不安。

 そう感じた瞬間に、現状は反転する。確信を持っていたはずのものが揺らぐ。

 否定を求めれば、自身の行動は断定され、安心を得られる。

 肯定を求めれば、自身の行動は推定され、安心を他者に託す。ここにあるのは手掛かりで、その手掛かりは当然、他者にある。つまり、ここでいうならその手掛かりは俺だ。

 俺に手掛かりを求めた事で、主導権が動く。


 ジジイの得意げな顔が目に浮かぶようだ。


『お前は私に『媒体』を託したな。移したと言ってもいい』


「……貴桐」

 俺に覆い被さるように乗った来贅の手が、胸を圧迫してくる。

 声を出すのも苦しいが、口に出さなければ意味がない。

「『残念だな』」

 俺はそう言うと、自分の頭に指先を置いて言葉を続けた。


「『媒体』は、この中なんだよ」


 ハッとした表情を見せた来贅の手の力が緩んだ。

 その瞬間に俺は、来贅を力任せに押し退ける。

 俺は半身を起こし、立ち膝で座ると呼吸を整えた。

 同じに半身を起こした来贅。互いに目線を合わせ、少しの間が開く。

 俺は、ニヤリと笑みを見せると口を開いた。


「どうやって……知る……?」


 来贅の手が再度、俺へと伸びる。

 俺は、その手を掴んだ。

「俺の中に入って、俺になるか? それは心臓か? それとも脳か? そうして俺の体を奪ったら、お前はその姿を蘇らせる事が出来るか?」

 来贅の手を掴む手に力を込めた。

「やってみろよ」

「貴桐……お前……」

 俺の挑発する態度に、奴の迷いは大きくなっている。

 迫るように俺は、再度言う。

「やってみろ。媒体はこの中だ。()()()上手く使えよ」

 俺は、自分の頭を指でトントンと(つつ)いた。


「……お前に『選択』させてやる。俺の心臓か脳か、選べ」

「貴桐……」

 悔しそうにも睨む奴の目をじっと見ながら、俺は笑みを浮かべて言った。


 それは皮肉で言った訳じゃない。

 そうでなければ『共感』など存在する事もなかったからだ。

 だが、共感を強く存在させればさせる程、そのレガリアは……。


「俺は、これ以上の話はしない。さあ……どうする? ()()?」

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