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第14話 呪

「使っても何も起こらなければ、その書物に価値はない」


 亜央は、言葉を返したくても返せないようだった。

 俺を見る目が、言葉に出来ない思いを浮かばせている。


「だから()()()()って言っているんだよ、圭は。全てをな」


 亜央の腕から消えた『彼女』

 最後に残った骨は集められ、小さな箱へと移されていた。その箱を抱える亜央の手は震えている。

「亜央……お前だって、そこに価値を求めたから使ったんだろ。その術の使い方が正しいかどうかは、お前はもう分かっているだろうが……」

 俺は、一夜と来贅に目線を向けながら、後を続けた。


「結果は原因に起因し、原因は結果に影響を及ぼすという類感……要するに『呪い』そのものだ」


 俺の向かいにいる綺流へと目線を変えながら、亜央に言葉を続ける。

「亜央、お前……主殺しの話をしていたな。そんな昔話も書いてあったか。主となる者は、持っている能力そのものが、レガリア的な意味を持つ。つまり、君主であると認める事が出来る象徴だったって事だ。その能力も、当然、体力的にも衰退していけば、主と認める事は出来なくなる。だから殺すんだよ。それが安泰を持続させる『手段』って訳だ。じゃあ……衰退した主は、黙って殺されるのを待つばかりか?」

「だから……身代わりなんじゃないのか……?」

「ああ……身代わりだ。その能力も体力も全て」

「能力も体力も全て……」

「必ず生き返らせると『約束』して、な……」

「必ず……生き返らせる……」

 俺の言葉を繰り返す亜央。その声は辛そうにも震えていた。

「だからお前は、来贅に共感したんだろう」

「ああ……そうだな……そうだよ……」

「そもそもが、衰退していると気づくのは誰が一番早いと思っている? 若かろうが歳を取っていようが、それは変わらない。それでも衰退していないだろう若い時に主を殺すのは、その能力を上回る者が現れた時だ」


「貴桐……」

 圭の様子を見た後、侯和が俺の元に来た。

「あれが……お前の言っていた『反魂』なのか……?」

 侯和の表情は、強張ったままだ。

「そうだとしたら……誰を生き返らせるというんだよ……?」

「生き返らねえよ。そもそも、やり方が違う」

「じゃあ、圭はどうして……」

「ああ、奴が初めに行った呪術と同じ事をやっているだけだ」

「どういう……事だよ……」

「それ」

 俺は、侯和が手にしたままの書物を指差した。

「それに書いてあっただろ」

「あ……ああ。だけど……これが死者を生き返らせる方法だって……」

「それで?」

「こんなもの……共有出来る訳がないだろ……」

「そうだな。お前なら、そう答えると思っていたよ。それがタブーを引き寄せるからな」

「タブーを引き寄せるって……それじゃあ、これを使っている圭はどうなるんだよ……また呪いが返って来るんじゃないのか」

「タブーの方が簡単なのはな、タブーによって主の命を守る事が出来る為でもあるからだ。主になる者は、能力が高い者……それは同時に、その呪力の『感染』を引き起こす。それを抑える為だ。そもそも感染した結果がこれだからな?」

「主の命……って……それは宿木の枝を折った者って事だよな……」

 侯和の目線が一夜に向いた。

「やっぱり……お前が折らせたんだな、貴桐……だが圭は……圭はどうなる?」

「圭は継承者だ。精霊の意向を証明する者……だから……」


 俺は、書物に向けた指を、綺流へと向けて言った。


()()()()()()()()()()()って言ってるんだよ」

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