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scene38 僕の居場所

 で。

 僕の居場所がなくなった。


 学校には白皇先輩。

 王宮行きには来生先輩と神月先輩。


 どうしたらいいんだ。

 ──どうもにもできない。


 自業自得だけど!


 僕は冒険者になることに決めた。

 その前に最低限の状況説明をしておきたい。


 なぜ白皇先輩たちが王都に行くことを打診されたかというと、貴族社会には御付きの者が必要だからだそうだ。

 それで理事長の蒼麻貴子先生が自分の御付きの者として選んだのが、我が校が誇る三大美少女というわけである。

 見女麗しい御付きの者を連れていればハッタリになるだろうという判断もあったかもしれないね。

 美人教師たちを連れていくわけにはいかない。教職員は学校の切り盛りに忙しい。


 御付きの者が必要なのは、《無限の者》も同様だった。最低でも二人は必要らしい。条件まである。ゴブリンと戦った者は御付きの者になれないということだ。一人でも多くの生徒を連れていきたいという意図があるように思うが、蒼麻貴子先生はその条件を呑んだ。


 城塞化したとはいえ、学校はゴブリンが棲息する森のなかにあるのには変わらない。先生としては一人でも多くの生徒たちを王都に連れていきたいのだろう。それぞれゴブリン退治をした生徒たちに最大人数の六人を付けることになった。

 一年から男女半分づつを御付きの者にした。あからさまに「避難」という感じだ。カディアさんは先生の意図を察したようで道中にも危険があるとだけ言ったという。

 

 僕が王都に行かず学校にも残らないというと、カディアさんたちが猛反発した。


《無限の者》を野放しにはできないというのだ。


 助け舟を出してくれたのは蒼麻貴子先生だ。

 退学ではなく休学扱いにして蒼麻学院の所属にすることを約束し責任をとると言ってくれた。僕は退学するつもりだったけど、ここまでしてもらってワガママを通すわけにもいかない。


 カディアさんたちが認めてくれた最大の原因は、僕が冒険者になると明言したことだ。冒険者なら王国のどこにいてもギルドを通して所在地が判明するからだ。

 あと、“遠見の水晶”なるものを貰った。占い師が使いそうな水晶玉だが、遠隔地から連絡を取り合うものらしい。この水晶玉で一日一回連絡を入れるように言われた。


 学校の防衛を任されている冒険者の隊長には紹介状を書いてもらった。

 カディアさんたちから聞いていたのだろう。隊長は「期待しているぞ!」と言ってくれた。僕を《無限の者》だと思い込んでいるようだ。誤解なんだけどね。


 そうそう、装備一式と路銀は、カディアさんたちが用意してくれた。遠慮しようにも、こちらの常識を知らない。ありがたく頂戴した。

 次の町まで同行しようとも言われたが、それは断固拒否した。もう学校とはおさらばだ。ここらですっぱり縁を切らないと未練が残る。それだけはイヤだ。


 同行を拒否したとしても、次の町はひとつしかない。

 理事長先生たちは大所帯だ。出発するのに、後三、四日はかかる。

 その前に、僕は出発することにした。


 朝焼けの残る校門を出る。校門から砦の門まで歩いているうちに、門の衛兵の他に人影があった。


 そこには旅装姿の春日くんがいた。

 僕のびっくりした顔がよほどおかしかったらしい。吹き出した。

 春日くんは笑うとやっぱり可愛い。おっといかんいかん。こんなこと心のなかでも思っていてはいけない。


「どうして春日くんがここにいるの?」

「キミと同じ理由だよ」


「えーーー?! 春日くんもフラれたのーーー?!」

「やっぱりフラれたのが原因なんだ……」

 春日くんは、はあっとため息を吐いた。


「キミはほんとうに女の子のことばかりなんだねえ」

「そんな憐れみの目で……」


「ボクはキミと同じ冒険者になろうというのさ」

「冒険者に!? だって春日くん、オタクじゃないでしょ!」

「オタクじゃなきゃ冒険者になれないのかな?」

「いや、そうじゃないけど、そうじゃないけど!」

「ボクが冒険者になろうと思ったのはキミが理由さ」

「でも」

「友達だろ?」

「春日くん……」

「さ、行こうぜ?」

「うん!」


 こうして僕は冒険者の道に足を踏み入れることになったんだ。

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