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scene 11 美少年と友達になりたい

「春日くーん! 待ってよー!」

 僕は校庭に向かう春日くんに声をかけた。


 春日くんに嫌われたままなのはイヤだった。

 不登校で中退を考えている僕には、もうご縁のない関係のはずだが、それでもイヤなものはイヤなのだ。


「なんだよ?」

 不機嫌な声だったが、それでも立ち止まって、僕が追いつくのを待ってくれた。


「一緒に校庭に行こうよ」

「すぐそこが校庭。意味ある?」

「少しでも一緒にいたいんだ」

「まさか口説いているわけじゃないよね? みさかいないとか言わないよね?」

「そんな……ヒドいよ! 僕は春日くんに嫌われたくないだけだよ」

「だったら話しかけんな」

 僕はショックで膝から崩れ落ちそうになった。


「うそうそ。そんな顔すんなよ」

 僕はたちまち復活した。


 春日くんは、僕の態度の急変ぶりに少し笑った。

 やっぱり可愛い。……おっと、いかんいかん。可愛いとか心のなかでも思っちゃいけない。美少女にしか見えない外見にコンプレックスを持っている春日くんだ。嫌われたくなければ彼をそんな風に思うのは絶対に避けなければならない。


「でもなんで? ボクと友達にでもなりたいの? キミはひきこもりって聞いたけど」

「僕のこと知ってたの?」

「キミはある意味、有名人だからね」

「へ、変な誤解があって、学校に来られなくなっちゃったんだ……」

「誤解だったんだ? 学校で勃起したとか、それで女子を泣かせたとか、デカチンだとか」


「そ、それは……」

 僕は言葉につまった。どうする僕。どうしたらいい僕。

 春日くんは長いまつ毛が印象的な大きな瞳で僕を見上げた。純真無垢な輝きがまぶしい。


「う、うわさは尾ひれがつくものだから」

「あ。そうなんだ」

 春日くんはあっさり僕のウソを信じてくれた。

 だめだ。これはだめだろ。さあ勇気を出すんだ。


「ごめんなさい。すべて真実です」

「うっわ、気色悪ッ」

 僕は泣きそうになった。


 そもそも僕のせいなの? ドラゴンの制御ってみなさんどうしてるんですか? 僕だけですか? 僕ぐらいだけですか? 学校でドラゴンが屹立するのは……


「うそうそ、男だったら、たまにはそういうこともあるよ。キミはちょっとついてなかっただけじゃないかな」

「春日くん……」

 僕はまた別の意味で泣きそうになった。


「さ。校庭に行こうぜ?」

「うん!」

 やっぱり僕は春日くんと友達になりたいと思った。

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