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第3話今やるべき事とは?


私の父と母が勇者と聖女であった事が発覚したあの日。


私は肩書きという忌まわしき存在が何処に行っても付いてくるだろうと理解した。


親が勇者と聖女だから優秀、強い、行いが良いという"期待"、親が勇者と聖女だから、皮肉を言う、酷い目に合わす、殺すという"憎悪"。それらは無関係に私に襲いかかってくるだろう。


だから、私は——————この家から出る。


私だけで私を見てもらえるように。


着々と準備を進めよう。


この親は余りにも、異次元過ぎるのだ。普通に暮らしたい私の意識をねじ伏せる事は容易に想像出来る。


そして、娘という存在に対して愛が深過ぎるのだ。私でなく娘という存在に対してだ。誰でも良くてたまたま、私が生まれたからだけだから。


彼らは私を離してはくれぬほどに愛が深く、着いていくと言い出すのは間違いない。


しかし、彼らは世界の英雄。見た目は周知され、名の知られた存在であるだろう。


そんな親達の愛娘。


世界が存在を知らぬままにしておく方がおかしい。


だとするならば————若いうちに逃げるが吉だ、逃亡案を立てて即実行が望ましい。


しかし、作戦の抜け道を埋めておかないと危険だろうし、一度失敗したら余計に離してくれぬだろう。


ただ逃げ出すだけでは欺けない。


前提条件は捜索願を出されても安全な場所である事だが、裏を返せば捜索願を出されなければ、安全じゃない場所でも構わないという事だ。


そんな上手い話があるのか?


無ければ作ればいい、犠牲と考慮した上での策を。それは後々として今やるべき事は—————脱出する手段の確保である、力の確認だろう。



魔王は父に討伐されたと聞いたが、あの魔王は生きているだろうか。

気になる所だが、あの魔王は確かに言っていた。転生という能力は"同じ"力も宿すと。


力を宿すのは後天性と先天性がある。前者は10歳となった日に、"力の証明"という儀式を行い、力を宿させると言うモノで、能力者の9割を占める。後者は頭の成熟に伴い、自分がその力を持ってると自覚する。


私の場合は元の記憶があったため、二度目はなかったが、なんだか使えそうな予感はする。


しかし、力加減を間違って家を半壊、などという事をしてしまえば親に力がバレ、大人になるまで禁止をくらったり、危ない事をしない様に見守られたりするだろう。


ならば、親が居ないうちに外に出て力を試し、パパっと帰ってくる事だ!


という事でいない間に外に出る事を決行する!

前までは家から出ようとした瞬間に、母に首根っこを掴まれていたが、その感知能力は間違いなく、結界によるものだろう。


そして、それが先日破壊されたと言う事は—————今なら、外に出放題だ!!感知する物も何も無いぞ!!


ということで、父が狩りに行っている日に母が一緒に出掛けようと言ってきたが断っておく。



よしこれで、隠れて外に出れるぞ!


とまあ、村の中を歩くという事で家で必要な物を拝借させて頂いた。白く、金の装飾で煌びやかなお面を見つけた。付けてみるとブカブカだが調整すると安定する場所を見つけた。


べ、別に、顔を見せたくないという一般的でない女子発想でなく、目を合わせるのが恥ずかしいからという性格上の問題だからな!問題ない!


そして、懐が凄く寂しさを感じていたのでついでに父のナイフも拝借する。

ほら、女の子一人では危ないだろう?だから護身用兼主要武器用として持っているだけだ。

父は勇者だから、なんかナイフに強そうな力宿ってないかなと思いながら、振って見たがただのナイフだった。

使っている鉱石が良いやつって事にしておこう!!


さて外へと出たが、何故かジロジロと見られる。

そんなにお面が珍しいか?しかし、外すと親以外目を合わせられない自信があるぞ!

大勢に見られても母親に報告されるだけなので無視してさっさと行く事にしよう。



村を見回し、3メートルの大きな石壁を見つけた。おそらく敵から村を守る外壁だろう。


凹凸を確認し、足を引っ掛けて登ると、思った以上に軽やかに登れた。鎧が無い分、可動域が広がった為、力を使わない時の前世の私以上に簡単に登れたはずだろう。


まあ、力を使う前の準備運動だ。7歳の私だと力の調整を誤る可能性は大いにあるだろうし、体が耐えきれるか分からないからな。



外壁の上に立つと、目の前には雲ひとつ無い青空の下、壮大な草原が広がっている。ただ、草木が私の背丈を超えてしまっている為、入ってしまえば先行きを見通せなくなるだろう。


しかし、それは隠密に行動出来ると同義だ。この村ならば、大人の一声で爆速で母か父が飛んでくるだろう。


外壁上から飛び降り、受け身を取って草木を掻き分けて入っていく。


ある程度歩いていると草木は徐々に低くなり、ついには膝まで低くなった。よし、この辺でいいかな?



私は目を瞑り、神経を研ぎ澄ませる。


忘れては無いだろう?


そう私に問い掛ける。虐殺の黒騎士と謳われた由縁を—————




————生物の心臓の音が聞こえる。



その鼓動の音が。



微かな音で、風に遮られたはずのそれは私の力によって、鮮明に読み取れた。




その数は一つ、二つ、三つ————




過去の記憶を持ってるが故に

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