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第一話 魔王との対峙

「どうした。もう終わりか」


圧倒的強者の眼力に冷や汗が止まらない。これまでに見ないほどの強敵、魔王を睨み付けて私はチラリと先程受け止めた"力"での損傷具合を見る。


紫電が一閃する事を思わせる斬撃は、私の皮膚も、甲冑をも切り裂き、血を結晶に変化させた。

纏っていた漆黒の鎧は無惨にも粉々で所々に生えた赤い結晶が体に突き刺さり、激痛が走る。

動かさずともコレだ、私はピクリとも動けず、地面に倒れ込んでしまった。


もうこれでは傷を癒す体力すら残っていない。

魔王の持つ"力"に私は一切太刀打ちする事が出来なかった。


ああ......


「どうしてこうなったんだろう」


後悔の言葉は驚く程、すんなり口から漏れ出た。


「何を言っている?貴様は魔王たる我を倒しに来た"虐殺の黒騎士"、なのだろう?」


"虐殺の黒騎士"。

そうだ、私は圧倒的技量、周りを騒然とさせる力。それと全身を纏う漆黒の鎧から、黒騎士と呼ばれ噂が巡り巡って、"虐殺の黒騎士"と言われている。

それなりには有名だと自覚はしているが、まさかあの神々の加護を宿した勇者すら打ち負かす畏怖

の塊、"魔王"にまで名が認知されているとは予想外だった。


しかし、私の身はただ死を待つだけの存在。


なんで、なんでなんだ。私はただ生き延びる為、自身の為だけに戦ってきたのにどうして、どうして、こうなってしまったんだ......


「立て」


魔王は指を鳴らし、私に掛けた力を解く。すると結晶化していた血はドロドロに溶けていった。

その影響か、かろうじて姿を保っていた兜が割れて、巻いてあった粗布が地面へとするりと落ちるのが見えた。


誰にも見せたくはなかったその身を、死期を悟りながら見せる事となるとは......


「む?貴様、女だったのか」


魔王は私の顎をクイッと上げて、私の顔を覗き込むように見る。それに対し、私は目を逸らすしか出来なかった。


「そうだ、笑えるだろう?舐められまいと、ひた隠し、恐れられてきたこの虐殺の黒騎士が"女"だと」


世界は女を卑しめ、道具と扱い、女の冒険者すら軽蔑の目を向ける。女は非力という古臭い風習が根強く、広まっている。更に私は.......私は.......


「何故、貴様は泣いている?」

「......え?」


いつの間にか視界は滲んでいる。私は泣いていた。この赤い瞳から涙を流すなど、幼き頃に両親を亡くした以来は一度も無かった。


「......悔しいのだろう」

「悔しい?我に負けた事が?」

「違う。私は今までこの身を人に見せた事は無かった。理由なら、長い年月を生きてきたお前には分かるだろう?」

「そうか......その容姿、貴様は......」


私は無言で頷いた。

人族、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族、妖精、悪魔に天使。軽く上げただけでも、この世界には様々な特異性を持った種族が生息しており、その中でも極めて稀な生命体がいる。


魔族の種類に分類する白夜族だ。白夜族はサキュバス、インキュバスのような魔族内の夜族という種族に極めて似た容姿をしている。しかし、その容姿は真っ白な肌に髪は、黒の容姿をする夜族と真逆。

ココだけならば、まだ普通であるだろう。しかし、白夜族は何にでも染まる白だ。


白夜族と交わる時、白夜族に混血という言葉は無い。相手種族に順応し、相手種族の純血種の子を産む、がそれだけではない。白夜族から産まれた個体は複数の"力"を宿す。


ごく稀にしか産まれないはずの"力"を持った個体をだ。


さすれば、白夜族は女という道具の中でも、人という扱いはされないだろう。


「覚えている......最後は自害したあの種族を。絶滅したと思い込んでいたがよもや生き残りがいたとは......」

「白夜族は私以外は死んでしまった。しかし、伝承はまだ残っている」


それ故に私は常に甲冑を纏い、この身を悟られぬ様に、生きてきた。

堂々と、この身を見せびらかせる訳にもいかず、姿を見せても、私の種族しか見てくれない。誰も私その物を見てはくれない。


それが何よりも苦痛で、悔しかった。


「もう良いだろう?......首をはねろ。それとも私を白夜族として使うのか?」


そう言い私は魔王を見据えた。


黒に染まった美しい髪、真っ白な肌。整いすぎたその容姿、そして真っ赤な赤黒い血のような眼。


私が普通であれば見惚れていたかもしれない。負けた身である私をどう使おうが勝手だが、もし、私を白夜族として扱うならば、魔王を受け入れはせず、自らの命を断つのみ。


魔王の口がゆっくりと動いた。さあ......来い。


「ふむ、気が変わった。貴様は今まで見た誰よりも強い。貴様が美しい女人と分かった時は妻へ迎えようと思ったが......」


魔王は懐から何かを取り出す。


身構えたが、もう遅い。魔王の瞳のような赤い液を私へと注ぐ。


「輪廻を拒め」

「なにを———」


心臓が跳ね上がるように胸が痛い.......先程の戦闘の怪我が感じなくなる程に熱く、全身から血が噴き出すかのような衝撃が走った。


「我の友の力を込めた血だ」

「それ........」


かろうじて声は出せた。ああ、早く私を—————


「『転生』。同じ力を、同じ種族を宿し、千年後の世界を楽しめ。」

「な゛ん゛でっ!!」


魔王の言葉に、痛みを跳ね返すほどの勢いで私は魔王を睨み、そう裏返った声を出す。


こんな人生は嫌だったのに、自害すらしようと考えていた時期もあったのに。


苦しい苦しい痛みを、一瞬で終わらせて欲しいのに......


「安心しろ、千年も経てば世界は変わり、白夜族の伝承も消える事だろう」

「私は、私は—————」


私は普通の女の子になりたかった。


しかし、この魔王が言う事が本当ならば......


「お前には、お前には何も返せない!」

「必要など無い。ただの気まぐれだ。しかし、まあ来世で邂逅しても、恩が残っていればその時の返せ」


はは、こいつ千年も死なないつもりだ。それに、気まぐれで敵を助けるなど本当に————


「バカめ」

「はっはは!吸血鬼の始祖たる最強の我が死ぬとでも?」


吸血鬼の始祖......?ならば何度切り刻んでも、死なないし強いはずだ。


しかし、もう意識が......


「黒騎士、しばらく千年ばかり寝ているがいい」


魔王の声と共に急に視点が転がり、地面が回転した。いや、私が回っているのか。そう思う間も無く、飛び散った血で真っ赤な水晶が花のように咲いた。



ああ、綺麗だ。


そう感じていたが視界はブラックアウトして、何もかもを考えられぬ程に思考が鈍く重く......沈んだ。



コチラは友人に発注依頼を受けた作品です。私も注文をぶん投げたので良作になる事を期待!

ちなみに一話見せてもらったら、主人公が却下されてました^^


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