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新エジプト神話  作者: 黒紫
8/14

第八話

---<第八話>-----------------------------------------------------

ホルス :「トト、こいつ本物か?」

トト  :「容姿は似ていますが、別人です。恐らくアトゥムの『影』だと思われます。もし本人なら我々が敵う相手ではありません」

ホルスはアトゥムの前まで飛んで行く。

ホルス :「私の父、オシリスを何処へやった?」

アトゥム:「オシリスか?」「われの存在に気付いたが故に処分した」「所在など、我の知る所ではない」

ホルス :「何だとぉ!」

ホルスがそう言いながら拳を繰り出すと、アトゥムを包む球体の周りの空間が歪む。(球体の大きさは3メートル程)

ホルス :「効かないのか!?なら、本気で行くぜ!」

ホルスは両手で高速に拳を出し続ける。しかし、アトゥムの周りの空間が歪むだけで、全く届かない。

アトゥム:「何人なんぴとも我には敵わぬ」

アトゥムは左手をゆっくりと、掌を正面に向けながら肩の高さまで上げる。

直後に大きな衝撃波が発生し、ホルスは もの凄い勢いで船首に向かって飛ばされる。


女の子 :「ホルス!」

女の子は ほぼ一瞬で船首上空に移動し、ホルスを受け止めた。女の子には、腕から綺麗な羽が生えている。

ホルス :「お母、さ、ん」

ホルスは口から血を出して、目を閉じる。

女の子はアトゥムの方を向くと、掌からフォーク形の地上絵を2メートル程の大きさで100体出した。

地上絵は金色に輝きながら高速で飛んで行き、アトゥムを包む球体を全方向から突き刺し、更に周りを取り囲む。

刺さったフォークは少しずつ、アトゥムに近付いている。


女の子はホルスを抱きながら、目を閉じている。すると、アンクから光が溢れ、2人を 光る球体が包んだ。

数秒後、光が消え、ホルスが目を覚ます。

女の子 :「良かったぁ・・」

女の子は ふと、我に返る。

女の子 :「あれっ、私、羽が生えてる」「しかも、今、お母さんって・・・」


トト  :「話は後です」

アヌビス:「そうだな」「ホルス、やれるか?」

ホルス :「ああ、大丈夫だ」

アヌビスは掌から野球ボール位の黒い玉を出す。

黒い玉は大きくなりながらアトゥムの所まで飛んで行き、全体を包み込んだ。(周りのフォークも含む)

ホルスは両手を立てて、肩幅まで広げている。

ホルス :「これで、どうだ!」

ホルスは両手を近付けて、真ん中で合わせる。(手を合わせて、拝むような格好)

黒い玉は次第に小さくなり、消滅した。ように見えた。


数秒後、消滅地点から衝撃波が来る。

アトゥム:「我には効かぬ」

ピンポン玉くらいの 光の玉が現れ、大きくなっていく。(中にアトゥムがいる)

元の大きさに戻ると、アトゥムの力によって、刺さったフォークが次々と魂のカケラに戻る。

フォークの何本かはアトゥムを貫いているように見えるが、やがて、全てが魂のカケラに戻った。


アトゥムは、今度は右手を、掌を正面に向けながら肩の高さまで上げる。

すると、全ての 魂のカケラが、金色に輝く 光の矢に変化し、女の子に向かって飛んで来る。

トトが女の子の前に移動し、光の矢を魂のカケラに戻す。戻った魂のカケラは、トトのアンクに吸収された。


アトゥム:「つまらぬ遊戯だ」

アトゥムは右手の掌から野球ボール位の黒い玉を出す。

黒い玉は大きくなりながら、こちらへ向かって来る。

トト  :「皆さん、私の所に集まって下さい」

皆がトトの所に集まると、トトが掌から野球ボール位の光る玉を出し、全員が光の玉に包まれる。

すると同時に、その周りをアトゥムの出した黒い玉で覆われる。

黒い玉は、どんどん小さくなっていく。


アトゥム:「これで終わりだ」

トト  :「まだ、分かりませんわ」

バステト:「そうですね」

アトゥムの背後に、人の姿のバステトがいる。

バステトの掌には野球ボール位の光る玉があり、アトゥムとバステトは その光の玉に包まれた。


次の瞬間、アトゥムとバステトは黒い玉の中に、4人はアトゥムが居た位置に移動してした。

ホルス :「これで決まりだ」

ホルスは再び両手を近付けて、真ん中で合わせる。

黒い玉は小さくなり、ピンポン玉くらいの大きさになった。バステトは その直後に姿を現し、黒い玉を掌に載せた。

4人がバステトの所へ行くと、アトゥムは中で、青く光る玉に変化していた。


女の子 :「今のどうやったんですか?」

トト  :「私とバステトは、お互いが作り出した空間を一瞬で入れ換える事ができます」

黒い玉から声が聞こえる。

アトゥム:「我が負けるとはな。だが、我は一人ではない。この世界がある限り、我は存在し続ける」

周りの景色が色を取り戻す。船を掴んでいる手も消え、全員、船の船首に降り立った。


トト  :「本物のアトゥムは、外の世界で、この世界の管理をしておられます」

    :「この世界の中では、『1』に『1』を加えると『2』よりも少し小さくなります」

    :「小さくなるといっても、ゼロが幾つも並ぶ程、ごく僅かで、」

    :「この減った分が『時』の流れを生み出し、絶えず外の世界へ放出されています」

    :「簡単に言えば、この世界は大きな砂時計のような物で、砂が無くなるとアトゥムが上下を引っ繰り返すのです」

    :「この時、私が世界の『時間』を止める役目を負っていますが、アトゥム本人の『影』が写り込む事があり、」

    :「私とバステトが『影』を見付けた場合は、アトゥムの前に転送する手筈になっています」

    :「今回は、私達だけで何とかなりましたけどね」

アヌビス:「全くだ。単純に こちらの攻撃を返すだけの相手だったから倒せた」

女の子 :「これで私の記憶も戻るの?」

トト  :「そうですね。あなたの記憶が戻るまでには、まだ少し時間が掛かりそうです」

    :「それは明日かも知れませんし、10年後かも知れません」

女の子 :「・・・」

トト  :「そう、あれから随分経ちます」

    :「私は、冥界にいるイシスに助けを求められ、瞬間移動を行いましたが、既に姿はなく、アンクだけが残されていました」

    :「アトゥムの『影』は、イシスの強大な力を恐れ、直接戦わずに記憶を封じる方法を採ったのでしょう。その間に力を蓄えるために」

    :「恐らくイシスは、記憶を封じられる直前、世界中に自分の記憶のカケラを撒いた筈です」

    :「やがてそれらは、人が生み出した物と結び付き、のちに転生した自分が目にする事で記憶を取り戻せると考えた」

    :「博物館へ行ったのは、それを確かめるためです」

    :「ですが、あなたの記憶は戻りませんでした。封印の効力は まだ続いていたのです」

    :「バステトが私に あなたの居場所を教えなかったのは そのためでしょう」

ホルス :「そんな状態で勝算があると思ったのか?」

トト  :「はい。私の勘ですわ」

アヌビス:「まあそれはいいとして、我々は まだアアルへ向かう途中だ」

トト  :「そうでしたね」

バステト:「では皆様、私はアアルで待っております」

バステトはそう言うと一瞬で消える。

そして、船は再び動き出す。女の子の翼はもう消えていた。


・・・5時頃・・・

トト  :「皆さん、見えてきましたね。あれがアアルの門です」

女の子 :「でも、あれから何も無かったけど・・・」

トト  :「それは、あなたが先ほどの戦いで少し変わったからかも知れませんね」


門の前。ファラオを含む全員が船首にいる。

しばらくすると、門から声が聞こえてきた。

門番  :「アアルへの入園を望む者、我が問いに答えよ」

    :「この世で『生きる』事に意味はあるか?」


ファラオ:「私はあると思う。それが私がここに来た理由だ」


ホルス :「この世界の中には同じ物が存在しない。どの一瞬を切り取っても全てが異なる」

    :「詰まり、生きる事は絶えず変化する事」

    :「変化を意味だとするなら、一瞬毎に答えが変わってしまうだろう」


トト  :「この世界で『生』を望む事は、永遠の契約を結ぶ事」

    :「故に、その者が思う『永遠』が意味であり、答えとなるでしょう」


アヌビス:「生きる事に意味があると考えるのなら、人は死ねなくなってしまう」

    :「『生』を許されるという事は、『死』もまた許されるという事」

    :「『生きる事』と『意味があるという事』とは全く別の話だ」


女の子 :「私は、あってもいいと思う」

    :「この世界が突然消えたりしないのは、その事を考える人が居るからじゃないかな」


門番  :「宜しい、入園を認める」

巨大な門がゆっくりと開く。

船は前に進みながら次第に浮き上がり、数十メートル上空を飛んで行く。

下を見ると、広大な土地に川が流れ、様々な生き物が住み着き、沢山の畑や家がある。

そこでは、何億という魂が主に農耕を営んで暮らしている。


トト  :「この辺りでいいでしょう」

船が止まり、ファラオが船の中に入る。

暫くすると船の中央から今まで集めた魂のカケラが次々に出てくる。

魂のカケラは200メートル上空まで昇り、直径20メートル程の光の玉になった。

トト  :「皆さん、いよいよ明日で私達の役目も終わります」

    :「今まで ありがとうございました」

ホルス :「オレはそれなりに楽しかったぜ」

アヌビス:「そうだな、やっと肩の荷が下りる」

女の子 :「短い間でしたけど、私、皆と仲良くなれて良かったです」


トト  :「さあ、夕食に致しましょう」「バステトも一緒に如何ですか?」

バステト:「それでは、お言葉に甘えさせて頂きます」

バステトがトトの隣に突然現れる。

バステト:「皆様、宜しくお願い致します」


全員ダイニングルームへ。

まず、一番奥に追加された椅子にトトが座る。続いてホルスが座り、

向かいに女の子、隣にバステト、向かいにアヌビス(ホルスとアヌビスは隣同士)の3人が同時に座り、

最後にファラオがいつもの席に座った。(トトとファラオは向かい合っている)


・・・食事をしながら・・・

女の子:「皆と食事をするのも、明日で最後ですね」

トト :「心残りはありますか?」

女の子:「よく分かりません。家に帰ったら、今までの事、よく考えてみようと思います」

   :「ところで、明日、何をするんですか?」

トト :「勿論。秘密ですわ」


夜。5人で風呂に入り雑談。バステトは猫の姿で、女の子のベッドの上で眠る。


・・・朝8時・・・

朝食後、6人全員で船の外へ出る。

空を見上げると、巨大な光の玉の周りを、野球ボール位の 光の玉となった魂が幾重にも取り囲んでいる。その数、1億余り。


女の子 :「何これ!?」

バステト:「これから私が ある空間を作り出し、ファラオが望む場所へ移動できるように致します」

トト  :「集めた魂のカケラは、その場所で、新しい太陽の核になります」

    :「ファラオは神となり、新たな太陽系で『生』を望む魂と、共に生きるのです」

バステトが掌から野球ボール位の黒い玉を出すと、空に昇り、空を覆うブラックホールのようになった。


トト  :「ファラオに、我々の力を授けます」

トト、ホルス、アヌビスの3人は目を閉じて両手を肩幅まで広げている。

やがて光の玉が現れて、直径50センチ位まで成長した。

女の子はその様子を見て真似をする。


4人は目を開ける。

ホルス :「光を」

トト  :「知恵を」

アヌビス:「眠りを」

女の子 :「生きる力を」

それぞれの玉(赤、緑、青、金色)がファラオの前まで飛んで行き1つになる。

金色に輝く その玉は次第に小さくなり、野球ボール程の大きさになると、ファラオの掌から吸収された。

ファラオは深々と頭を下げる。


トト  :「船を降ります」

5人は地上へ降りる。見上げると、船は上昇を始め、巨大な光の玉と魂を連れてブラックホールの中へ入って行った。

10秒後、ブラックホールが消えて元の空に戻る。


女の子 :「あっ、私の服」

ホルス :「問題ない」

ホルスが右手を開けると、掌の上に、半透明の膜に入った船が見える。

ホルス :「ファラオの乗った船は、光で出した複製だ」

    :「目的地に着けば船は不要なので譲り受けた」

トト  :「そうですね。必要な物があればファラオが生み出せばよいのですし、」

    :「そこに生きる者が望めば、神もまた生まれます」

    :「・・・」

    :「戻りましょうか」

女の子 :「はい」

ホルス :「やっと終わったな」

アヌビス:「そうだな」

バステト:「皆様、またお会い致しましょう」

バステトは一瞬で姿を消す。


4人は空を飛んで出発前の地点まで、2時間掛けて戻った。

ホルスは掌から船を出し、浮かべる。船は数秒で元の大きさに戻った。

女の子は部屋に入って服を着替え、そして船の入り口へ。


女の子 :「皆はこれからどうするんですか?」

トト  :「秘密ですわ」

ホルス :「好きにするさ」

アヌビス:「考えておこう」

トト  :「皆、冗談ですけどね」

女の子 :「私、家に帰ります」

トト  :「そうですか。何かありましたら、呼んで下さいね」

ホルス :「お前の分身は、直接触れて強く念じれば元の 光の玉に戻る」「もう一度使えば、また分身が出る」

    :「自由に使うといいだろう」

女の子 :「ホルス。その言葉遣いを直しなさい!」「なんてね」

ホルス :「お前はまだ、母親に戻ってない」「戻ったら考えてやる」

女の子 :「・・・」

    :「皆、さようなら」


女の子は家に帰る。部屋に入ると、自分の分身と、バステトが猫の姿で居る。

女の子 :「今までありがとう、これからも宜しくね」


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