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新エジプト神話  作者: 黒紫
7/14

第七話

---<第七話>-----------------------------------------------------

門を通り抜け、接岸。大きな建物がある。

最初にアヌビスが降り、ファラオが続く。少し距離を取ってからトト、ホルス、女の子の順で進む。

中に入ると、ファラオがヌト(天空の女神でイシスの母)から祝福を受けていた。ファラオは永遠に生きられる事を約束される。

アヌビスとファラオが部屋に入ると、ヌトが女の子に

ヌト :「イシス、無事で何よりです」

女の子:「ご心配をお掛けしました」

女の子は咄嗟に答えると、軽く会釈して、トト、ホルスに続いて部屋に入った。


部屋の中。中央に大きな天秤があり、天秤の片方に「マアトの羽根」が載っている。

天秤の横ではキメラ獣「アメミット」が構えており、部屋の両端に合計42の神が座っている。

中央には既にアヌビスが居るが、一緒に来たアヌビスがファラオを連れて中央に進んでいる。

ホルス :「もう一人は光で出した分身だ」

    :「それから、お前とオレはここで見ているだけだ」

トトが中央に進み、「裁き」が始まる。

ファラオは「クフ」と名乗り、トトが手に持った札に書き記す。

天秤の上に心臓が現れると、アヌビスは天秤を動かして、水平にした。

ファラオは「私は何々はしていない」という言い方で、罪の否定告白をする。

盗み、騙し、冒涜、殺人等、全部で42。そして、天秤が水平のままである事を確認すると、

トト  :「相違ありません」

アヌビス:「通行を許可する」

ファラオは一礼すると、もう一人のアヌビスと共に外へ出た。

続いて、アヌビス、トト、ホルス、女の子の順で外に出る。


トト :「ファラオには、これから楽園アアルの入口の門に着くまでは、船の外へ出ないようにと伝えてあります」

女の子:「私、聞きたい事が沢山あるんです」「まず、あの女の人は誰ですか?」

トト :「あなたの母親ですわ」

女の子:「やっぱり私、何も思い出せないんです」

トト :「そうですね。少し、冥界を見て回りませんか?」


4人は上空を飛んでいる。

トト  :「この世界には、2つの『物』が存在し、魂が その2つを繋ぎ留める事で、我々は この世で『肉体』を維持しています」

    :「その2つとは、物質やエネルギーの元となっている『数えられる物』と、」

    :「才能や、存在を分けたり 違いを生みだす『数えられない物』です」

    :「『必然』と『偶然』、と答える人も居ますけどね」

    :「『裁き』の場では、この2つを、生涯に渡って正当に取得したのかどうかを判定します」

女の子 :「すると、あの獣って・・・」

アヌビス:「通行を許可された者は、楽園アアルへの道を選ぶか、下界に降りて再び『生』を受けるかを自らで決める」

    :「そうでない者は、獣に心臓を食われ、永き時を この地で彷徨う事になる」

下では何千万という魂が、此の間見た封印の中と似た状態になっており、周りは直径20キロの円状に高い壁で囲ってある。

トト  :「この下は地上と繋がっていて、罪の軽い者や改心した者は下界に降りられる場合もありますが、」

    :「殆どの者は、下界に向かおうとしても、また戻されます」

女の子 :「アヌビス、何とかならないの?」

アヌビス:「それは、私の役目ではない」


皆が女の子の顔をじっと見ている。

女の子 :「私なの?」

女の子は目を閉じて考えている。

「私の力って何だろう・・・」

心を落ち着かせると、女の子は、自分の中に何かが眠っているのを感じた。

10秒後、女の子は目を開け、右手を出す。掌から野球ボール位の青白く光る玉が現れる。

光る玉は飛んで行き、50メートル上空で大きくなりながらドーナツ状になった。

やがて、それは雲に変化し、直径100メートルの範囲で雨が降り始めた。


女の子 :「これでいいのかな・・・」

アヌビス:「まあ、いいだろう」

トト  :「雨が穢れた魂を清め、地上まで導いてくれますわ」

ホルス :「全ての魂が救われる訳ではないけどな」


全員で船に戻る。ファラオは船の中、4人は船首にいる。

トト  :「これからが本番です」「皆さん、宜しいですか?」

ホルス :「腕が鳴るぜ」

アヌビス:「これもまた、私の役目だ」

女の子 :「皆と一緒なら、やれそうな気がします」

トト  :「では、出発しましょう」

船が再び動き出す。

女の子 :「私、アレを出しますね」

アヌビス:「私も結界を張っておこう」

トト  :「はい。お願いします」

女の子は掌から光る玉を出し、ハチドリ1体とシャチ4体を実物大で出現させた。

ハチドリは船の真上を飛び、シャチは船を囲むように泳いでいる。

アヌビスも掌から光る玉を出して、船全体を膜のように覆う。


・・・・・


30分後、船の周り半径500メートルの半球上に直径10メートル程の赤い玉が次々に出現し、高速で船へ向かって来た。

トト :「来ましたね」

女の子は掌からフォーク型の地上絵を5体出し、迎撃する。幾つかは船に到達するが、ハチドリとシャチに防がれる。

10分後、赤い玉は出現しなくなった。

が、船の周りを黒い物で覆われてしまう。船の中からは、外が少し暗く見える。

周りを見ると、ハチドリやシャチが次第に大きくなってゆく。

トト :「私達、小さくなってますね」

ホルス:「つまらねえ」

ホルスが両手を真横に出すと、船の結界が広がり、押し返す。黒い覆いは消え、あっという間に元に戻る。


トト :「ここは、鏡のような役割を果たします」

   :「私達の能力を読み取り、それを返すのです」

   :「それは、人であったり、巨大な物であったり、『門』として現れる場合もあります」

   :「恐怖を抱いたり、自らを信じる事ができない者は、ここで果てるでしょう」

女の子:「果てるって?」

トト :「魂もまた、死ぬのです」「それは、この世界から出る事を意味します」

   :「外の世界での苦しみや痛みは、この世界の比ではありません。故に、みなこの世界に救いを求めに来るのです」


その後も、幾度となく障害が現れたが、難なく抜けた。


・・・・・


先方に何か見える。

女の子:「『門』ですね」

トト :「試してみますか?」

門の前に来ると、声が聞こえてくる。

門番 :「我は知恵を求める者なり」

女の子が前に出る。

門番 :「我には、ここに来る魂を12数えて、先に送る役目がある」

   :「しかし我は、数を数える事ができぬ」

   :「どうすれば良いのか?」

女の子は少し考える。

そして、掌から人型の地上絵を2メートル程の大きさで12体出し、一列に並べた。

女の子:「この前に1人ずつ立ってもらえればいいんです」

   :「全ての前に魂があれば、それが12です」

門番 :「宜しい、通行を許可する」

『門』は透明になり、消える。


トト :「お見事ですわ」

ホルス:「当然だな」

トト :「さて、今から明日までは、特に何も起こらないでしょう」

   :「皆さん、また明日お願いしますね」

全員で船の中に入る。船はハチドリとシャチに守られていて、結界もそのまま。

夕食を摂り、風呂で雑談をして眠りについた。


・・・次の日・・・

朝から、船首で4人が目を光らせている。

しかし、何も起こらず、昼前になる。

トト  :「おかしいですねえ。船を狙ってくる者がいません」

女の子 :「此の間の本を作った人ですか?」

トト  :「いいえ、我々の目的を知る者は大勢います」

    :「集めた魂のカケラの数だけでも1億は超えてますから、かなり魅力的な筈です」

アヌビス:「ならば、その者が片付けたのだろう」

ホルス :「恐らくな」

女の子 :「・・・」

トト  :「取り敢えず、お昼に致しましょうか」

トトが時間を止めて、昼食を摂る。そして再び4人で見張る。


・・・2時頃・・・

ホルス:「来たか」

船の両脇から巨大で半透明な手が4本ずつ、計8本が下から出てきて船を押さえる。

直後、周りの空間の色が無くなっていく。

女の子:「トト、時間を止めたの?」

トト :「いいえ、私ではありません」

船の前には、光る球体に包まれた人影が見える。


「我が名はアトゥム。この世界を統べる者」


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