第六話
---<第六話>-----------------------------------------------------
8日後の月曜日。
朝食の席で、
トト :「今日は、4人で博物館に行こうと思います」「皆さん、如何ですか?」(笑顔で)
女の子 :「いいですよ」
アヌビス:「いいのか?」(トトの顔を見ながら)
ホルスはトトの顔を睨んでいる。トトは笑顔のまま。
ホルス :「・・・」「仕方ねえ、行くか」
トト :「はい。決まりですね」
朝食後、トトを先頭に船から飛び立つ。トトは船から約250メートル離れた所から下界に降りた。
着いたのは、エジプトのカイロ博物館の正面。真夜中。
トト :「時間を止めますね」
:「ホルス、明かりをお願いします」
ホルスが掌から光の玉を出すと、ホルスの頭上1メートル程の所で浮かび、半径10メートル程が明るく照らし出された。
トト :「皆さん、参りましょう」
トトを先頭に中に入る。入り口のホールには、石像や石棺などが展示されている。
トト :「何か気になる事があれば、言って下さいね」
トトは展示されている石像や石版、副葬品等について簡単な説明をしながら進む。
そして、ツタンカーメンの展示室。
女の子:「これが有名なツタンカーメンですか。私、一度見てみたかったんです」
トト :「それは良かったですわ」
女の子は棺を見ている。
女の子:「足にも描いてあるんですねえ」「この翼の女の人は誰ですか?」
トト :「イシスですわ」「ファラオの名前を守って貰うんです」
女の子:「トトは会った事があるんですか?」
トト :「勿論です。聡明で子供想いの方ですわ」
数分後。
トト :「では、そろそろ帰りましょうか」
全員で船に戻る。そして、いつものようにカケラ集めを始めた。
・・・夜・・・
4人で湯船に浸かりながら、
トト :「皆さん!」「明日、出発しようと思います」
ホルス :「いよいよか」
アヌビス:「分かった。ファラオには私から伝えておく」
女の子 :「私、まだ記憶が戻ってないんですけど・・・」
トト :「心配要りませんわ」「自分の力を信じて下さい」
全員風呂から上がり、服を着て部屋に戻ろうとした時、トトが女の子に声を掛ける。
トト :「私と一緒に来て頂けませんか?」「ちょっと遠いんですけどね」
女の子:「はい。行きます」
トトと女の子は船の入り口に向かう。船の入り口では、侍女が壺を持って待っていた。(食事の準備に使っている物と同じ)
トトが壺を受け取る。
女の子:「この壺・・」
トト :「魂のカケラが入った壺です」「しかも、精鋭ですわ」
2人は船から飛び立つ。船から約450メートル離れた所から下界に降りた。
地上に向かいながら、
トト :「多分ですが、あなたの記憶が戻らないのは、あなたの意思というより、誰かの力が関係していますね」
女の子:「じゃあ、その誰かを見付けないといけないんですか?」
トト :「此の間の本。きっと同じ人物です」
:「という訳で、何事にも準備は必要ですよね」
着いたのは、ペルーにある ナスカの地上絵上空。朝8時頃。
トト :「あなたには、形ある物に命を与える力があります」「勿論、死者に『生』を与える事も」
:「この壺を持って、念じてみて下さい」「きっとあなたの役に立つ事でしょう」
女の子:「分かりました。やってみます」
女の子はハチドリの絵の上空に行き、壺の蓋を取る。そして、目を閉じて念じてみた。
しばらくすると、数千もの 魂のカケラが次々壺の中から出てきて、地上絵に吸い込まれて行った。
1分後。ハチドリの絵から、コピーするように透明で光るハチドリが出て来る。(地上絵はそのまま)
トト :「私が思った通り、あなたの力は健在です」「他の絵もやってみましょう」
女の子は、他にコンドル、猿、クモ、シャチなど、全部で15の絵を出した。出てきた絵は頭上を飛び回っている。
女の子は壺をトトに返した。
トト :「全て、あなたが命じる通りに動きますし、小さくしたり、材質を変える事もできます」
:「まず、片手を出して、開いて下さい」
:「そして、手に意識を集中して下さい」
飛び回っていた15の絵は次第に小さくなって、女の子の掌に集まって来る。
やがて、野球ボール位の半透明で光る膜ができ、その中で全ての絵が泳ぐ。
トト :「ゆっくり、手を閉じて下さい」
光る玉は小さくなっていき、やがて光が消える。もう一度手を開いても、もう何もない。
トト :「これで、自由に出し入れができる筈です」
:「絵に入った魂のカケラの数だけ出せますから、かなりの戦力になりますわ」
女の子:「トト、ありがとう」
トト :「はい。では、帰りましょう」
・・・次の日・・・
朝食後、ファラオを含む全員が船首にいる。船の先は いつも薄い霧がかかっていて遠くは見えない。
トト :「皆さん、やっと この日が来ました」
:「我々の目的地、楽園アアルへの道のりは簡単ではありません」
:「皆さんの協力が必要不可欠です。どうか、皆さんのお力をお貸し下さい」
侍女が壺を持って現れる。壺から光の玉が出てきて、5対の櫂に入る。そして船はゆっくりと進みだした。
トト :「私の部屋に集まって下さい。大事な話があります」
ファラオは船の先を見つめたまま動かない。4人はトトの部屋に行く。
・・・トトの部屋・・・
トト :「まず、冥界の説明をしますわ」
アヌビス:「かつて冥界は私が治めていたが、オシリスに その座を譲り、私が補佐する事になった」
:「しかし、オシリスは3000年前に行方不明となったため、今は私が代わりに治めている」
トト :「私も捜してはみたのですが、全く分からないのです」
アヌビス:「船の向かう先には門があり、私がそこで 死者の裁き を行う」「この船に乗っているファラオが対象だ」
:「まあ、ファラオなら問題は無いだろう」
トト :「その後、楽園アアルに向かう訳なんですが、必ず災いが起こりますので、船を守らなくてはなりません」
:「それ以外にも、幾つかの『門』が行く手を阻みます」
ホルス :「オレがいるから大丈夫だ」
女の子 :「アアルには何があるんですか?」
トト :「それは、行ってのお楽しみですわ」
暫し沈黙の後。
トト :「さて、本題です」
:「これから先、あなたが誰かに会えば、名前を呼ばれると思います」「ですので、あなたの名前を教えます」
:「あなたの名は イシス です」
女の子 :「私、羽が生えてるんですか?」「えっ、子供もいるの!?」
トト :「この先に、我々が戦うべき相手が潜んでいます。オシリスの事も きっと関係があるでしょう」
:「罠があるかも知れませんし、我々の力を封じてくる可能性もあります」
ホルス :「面白い、やってやるさ」
アヌビス:「そうだな」
女の子 :「私、記憶を取り戻したい」「皆と一緒に頑張ります」
トト :「そうですね。私も本気を出しますわ」
:「ひとまず、話はこれで終わりにしましょう」
トトは移動してクローゼットに向かう。
トト :「そうそう、これに着替えて貰えませんか?」
女の子 :「私ですか?」
トトは新しい服を出す。
トト :「神聖な場所に行くのですから、それなりの格好をして頂かないと」
女の子は服を受け取る。
トト :「到着は2時頃の予定です」「それまでは、皆さんゆっくりしていて下さい」
女の子は部屋に戻って着替える。女の子は、本の中で見た姿と同じになった。
全員(ファラオを含む)で昼食を摂った後、しばらくしてから女の子は船首に行く。ファラオは正面を見つめている。
やがて残りの3人も船首にやって来た。
正面に巨大な門が見えてくる。幅100メートル、高さ30メートル。死者の魂が次々と入って行くのが見える。
アヌビス:「ここに来るのも久しぶりだな」




