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新エジプト神話  作者: 黒紫
6/14

第六話

---<第六話>-----------------------------------------------------

8日後の月曜日。

朝食の席で、

トト  :「今日は、4人で博物館に行こうと思います」「皆さん、如何ですか?」(笑顔で)

女の子 :「いいですよ」

アヌビス:「いいのか?」(トトの顔を見ながら)

ホルスはトトの顔を睨んでいる。トトは笑顔のまま。

ホルス :「・・・」「仕方ねえ、行くか」

トト  :「はい。決まりですね」


朝食後、トトを先頭に船から飛び立つ。トトは船から約250メートル離れた所から下界に降りた。

着いたのは、エジプトのカイロ博物館の正面。真夜中。

トト :「時間を止めますね」

   :「ホルス、明かりをお願いします」

ホルスが掌から光の玉を出すと、ホルスの頭上1メートル程の所で浮かび、半径10メートル程が明るく照らし出された。

トト :「皆さん、参りましょう」

トトを先頭に中に入る。入り口のホールには、石像や石棺などが展示されている。

トト :「何か気になる事があれば、言って下さいね」

トトは展示されている石像や石版、副葬品等について簡単な説明をしながら進む。

そして、ツタンカーメンの展示室。

女の子:「これが有名なツタンカーメンですか。私、一度見てみたかったんです」

トト :「それは良かったですわ」

女の子は棺を見ている。

女の子:「足にも描いてあるんですねえ」「この翼の女の人は誰ですか?」

トト :「イシスですわ」「ファラオの名前を守って貰うんです」

女の子:「トトは会った事があるんですか?」

トト :「勿論です。聡明で子供想いの方ですわ」

数分後。

トト :「では、そろそろ帰りましょうか」

全員で船に戻る。そして、いつものようにカケラ集めを始めた。


・・・夜・・・

4人で湯船に浸かりながら、

トト  :「皆さん!」「明日、出発しようと思います」

ホルス :「いよいよか」

アヌビス:「分かった。ファラオには私から伝えておく」

女の子 :「私、まだ記憶が戻ってないんですけど・・・」

トト  :「心配要りませんわ」「自分の力を信じて下さい」


全員風呂から上がり、服を着て部屋に戻ろうとした時、トトが女の子に声を掛ける。

トト :「私と一緒に来て頂けませんか?」「ちょっと遠いんですけどね」

女の子:「はい。行きます」

トトと女の子は船の入り口に向かう。船の入り口では、侍女が壺を持って待っていた。(食事の準備に使っている物と同じ)

トトが壺を受け取る。

女の子:「この壺・・」

トト :「魂のカケラが入った壺です」「しかも、精鋭ですわ」


2人は船から飛び立つ。船から約450メートル離れた所から下界に降りた。

地上に向かいながら、

トト :「多分ですが、あなたの記憶が戻らないのは、あなたの意思というより、誰かの力が関係していますね」

女の子:「じゃあ、その誰かを見付けないといけないんですか?」

トト :「此の間の本。きっと同じ人物です」

   :「という訳で、何事にも準備は必要ですよね」


着いたのは、ペルーにある ナスカの地上絵上空。朝8時頃。

トト :「あなたには、形ある物にいのちを与える力があります」「勿論、死者に『生』を与える事も」

   :「この壺を持って、念じてみて下さい」「きっとあなたの役に立つ事でしょう」

女の子:「分かりました。やってみます」

女の子はハチドリの絵の上空に行き、壺の蓋を取る。そして、目を閉じて念じてみた。

しばらくすると、数千もの 魂のカケラが次々壺の中から出てきて、地上絵に吸い込まれて行った。

1分後。ハチドリの絵から、コピーするように透明で光るハチドリが出て来る。(地上絵はそのまま)

トト :「私が思った通り、あなたの力は健在です」「他の絵もやってみましょう」

女の子は、他にコンドル、猿、クモ、シャチなど、全部で15の絵を出した。出てきた絵は頭上を飛び回っている。

女の子は壺をトトに返した。


トト :「全て、あなたが命じる通りに動きますし、小さくしたり、材質を変える事もできます」

   :「まず、片手を出して、開いて下さい」

   :「そして、手に意識を集中して下さい」

飛び回っていた15の絵は次第に小さくなって、女の子の掌に集まって来る。

やがて、野球ボール位の半透明で光る膜ができ、その中で全ての絵が泳ぐ。

トト :「ゆっくり、手を閉じて下さい」

光る玉は小さくなっていき、やがて光が消える。もう一度手を開いても、もう何もない。

トト :「これで、自由に出し入れができる筈です」

   :「絵に入った魂のカケラの数だけ出せますから、かなりの戦力になりますわ」

女の子:「トト、ありがとう」

トト :「はい。では、帰りましょう」


・・・次の日・・・

朝食後、ファラオを含む全員が船首にいる。船の先は いつも薄い霧がかかっていて遠くは見えない。

トト :「皆さん、やっと この日が来ました」

   :「我々の目的地、楽園アアルへの道のりは簡単ではありません」

   :「皆さんの協力が必要不可欠です。どうか、皆さんのお力をお貸し下さい」

侍女が壺を持って現れる。壺から光の玉が出てきて、5対の櫂に入る。そして船はゆっくりと進みだした。

トト :「私の部屋に集まって下さい。大事な話があります」

ファラオは船の先を見つめたまま動かない。4人はトトの部屋に行く。


・・・トトの部屋・・・

トト  :「まず、冥界の説明をしますわ」

アヌビス:「かつて冥界は私が治めていたが、オシリスに その座を譲り、私が補佐する事になった」

    :「しかし、オシリスは3000年前に行方不明となったため、今は私が代わりに治めている」

トト  :「私も捜してはみたのですが、全く分からないのです」

アヌビス:「船の向かう先には門があり、私がそこで 死者の裁き を行う」「この船に乗っているファラオが対象だ」

    :「まあ、ファラオなら問題は無いだろう」

トト  :「その後、楽園アアルに向かう訳なんですが、必ず災いが起こりますので、船を守らなくてはなりません」

    :「それ以外にも、幾つかの『門』が行く手を阻みます」

ホルス :「オレがいるから大丈夫だ」

女の子 :「アアルには何があるんですか?」

トト  :「それは、行ってのお楽しみですわ」


暫し沈黙の後。

トト  :「さて、本題です」

    :「これから先、あなたが誰かに会えば、名前を呼ばれると思います」「ですので、あなたの名前を教えます」

    :「あなたの名は イシス です」

女の子 :「私、羽が生えてるんですか?」「えっ、子供もいるの!?」

トト  :「この先に、我々が戦うべき相手が潜んでいます。オシリスの事も きっと関係があるでしょう」

    :「罠があるかも知れませんし、我々の力を封じてくる可能性もあります」

ホルス :「面白い、やってやるさ」

アヌビス:「そうだな」

女の子 :「私、記憶を取り戻したい」「皆と一緒に頑張ります」

トト  :「そうですね。私も本気を出しますわ」

    :「ひとまず、話はこれで終わりにしましょう」


トトは移動してクローゼットに向かう。

トト  :「そうそう、これに着替えて貰えませんか?」

女の子 :「私ですか?」

トトは新しい服を出す。

トト  :「神聖な場所に行くのですから、それなりの格好をして頂かないと」

女の子は服を受け取る。

トト  :「到着は2時頃の予定です」「それまでは、皆さんゆっくりしていて下さい」


女の子は部屋に戻って着替える。女の子は、本の中で見た姿と同じになった。

全員(ファラオを含む)で昼食を摂った後、しばらくしてから女の子は船首に行く。ファラオは正面を見つめている。

やがて残りの3人も船首にやって来た。


正面に巨大な門が見えてくる。幅100メートル、高さ30メートル。死者の魂が次々と入って行くのが見える。

アヌビス:「ここに来るのも久しぶりだな」


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