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新エジプト神話  作者: 黒紫
3/14

第三話

---<第三話>-----------------------------------------------------

次の日の朝8時。女の子が船の入り口まで飛んで行くと、トトが立っていた。女の子は挨拶する。

トト :「おはようございます」「昨日は よく眠れましたか?」

女の子:「あの後、バステトという人に会ったんですが、ご存知ですか?」「私が幼い頃、家にやって来た猫なんです」

トト :「バステトは何か言っていましたか?」

女の子:「まだ その時ではないと、だけ・・」

トト :「なら、そうなのでしょう。これからどうするかは、あなたが決める事です」

女の子:「でも私・・・」「・・・」

トト :「では何故、今日いらっしゃったのですか?」

女の子:「それは、あなたに聞きたかったのと、昨日女の人の所へ行く途中で気になった事があるんです」

   :「私、ちょっと行ってきます」


女の子は船から10メートル程離れた所から下界へ。

降下しながら、次第に目的地に近付く。

「やっぱり凄く大きな力を感じる・・・」

着いたのは、大仙陵古墳(仁徳天皇陵)の上空。

「間違いない。ここだわ」

女の子は3人に呼び掛ける。

女の子 :「この場所で何かを感じるんです。皆さん集まって頂けませんか?」

トト  :「はい。すぐに参ります」

ホルス :「おう」

アヌビス:「わかった」

1分後、3人が上空から降りてくる。


女の子 :「これ、何でしょうか?」

アヌビス:「封印だな」

    :「この世界には様々な『流れ』が存在する」「風が吹くと物が飛ばされるように、魂もまた、流される」

    :「ここには、その流れに捕まった死者の魂やカケラが集まって来るのだろう」

    :「それも、悪しき魂が」

    :「下界を彷徨う死者の魂は、生ける者の魂にも多少の影響を与える」

    :「それ故、この土地に住む者たちが封じたとしたら、これは、『風』が与えた罰なのかも知れんな・・・」

トト  :「アヌビス、開放しますか?」

アヌビス:「無論だ」

アヌビスはそう言うと、右手を広げた。すると、掌からピンポン玉くらいの光る玉が出現する。

その玉はゆっくりと形を変え、古墳と同じ 鍵のような形となった。(古墳の真ん中の部分)


アヌビス:「ホルス、頼む」

ホルス :「任せな」

その鍵はホルスの胸元へ移動する。ホルスが両手を出すと、鍵は真ん中に来る。

次にホルスが両手を広げると、鍵はみるみる大きくなった。

やがて、鍵は古墳と同じ大きさになり、古墳の中へ入って行く。(半透明の光が すり抜ける感じ)

10秒程経って、古墳を中心に半径2キロの範囲が光り出した。

直後、中心から巨大で真っ黒な球体が浮かび上がって来る。全員中心から離れていく。

トト  :「それでは、時間を止めますね」

女の子 :「わあ、周りの色が無くなっていく」(注:お約束みたいなものなので)

2分後、球体が全て地上に出る。


ホルス :「中に入るぞ、ついて来い」

トトを除く3人が中に入る。


・・・中・・・

女の子 :「真っ暗ですねえ」

ホルス :「ちょっと待ってなっ」

ホルスは両手を出す。(小さく前にならえみたいな形)

真ん中にピンポン玉くらいの光が浮かび上がる。その光は球体の中心に向かい、あっという間に全体を照らし出した。


女の子 :「何、この声」

耳を澄ますと色んな声が聞こえて来る。

呻き、泣き声、叫び、悲鳴、どれも耳を塞ぎたくなるものばかり。

女の子は声のする方向へ進む。

半透明だが、血まみれの人、骨と皮だけになっている人、鎧姿で刀を振りながら何かから逃れようとしている人、下を向いて ただ歩く人、その他色々。

女の子は声も出さずに、じっと見ている。

そこへアヌビスがやってきた。

アヌビス:「この者たちは この空間の中で、生と死の間の状態にさせられている」

    :「例え死を望んでも、死ぬ事なく永遠にな」

    :「私の役目は、死を望む魂に死を与える事だ」

アヌビスが右手を広げると、掌から野球ボール位の青白く光る玉が現れた。


アヌビス:「この世に生ける如何なる者も分け隔てなく、等しく死を与えん」

光る玉は中心に向かい、すぐに全体を覆った。死者の魂は玉状になり、何十万という数が球体の外へ次々と出て行く。

ホルス :「出るぞ」

    :「魂のカケラも相当な数だ」


3人は外へ出る。

ホルスは両手を大きく広げ、そして、ゆっくり閉じていく。球体はどんどん小さくなり、中にある 魂のカケラは集まって塊になった。

トト  :「時間を動かしますね」

ホルス :「オレは これを船まで運んでくる」

ホルスは直径5メートル程になった光る塊と一緒に昇って行った。

女の子 :「封印を解いたら、ここに集まって来る魂はどうなるんですか?」

アヌビス:「心配するな、すぐに分かる」

古墳の中心から光の柱が伸びて、天に向かう。(鍵の形で)

アヌビス:「これで、ここに来た魂は そのまま天に昇るだろう」


トトが女の子の正面に来て、女の子の顔を見ながら、

トト  :「素晴らしいですわ」

アヌビス:「そうだな」

女の子 :「いえ、そんな事ないです・・・」

トト  :「そうそう、船に戻ってみて下さい。開放した魂が見られますわ」


女の子は船へ戻る。船尾にホルスが立って、こちらの方向を見ている。女の子はホルスの隣に降りて、同じ方向を向いた。

ホルス :「そろそろだ」

女の子が出てきた辺りから、野球のボール位の光る魂が1つ、また1つと出てくる。

やがて、出てくる魂の範囲は広がり、2人が立っている所の周りからも出始める。(半径15メートル位の範囲)

魂は次々と出てきて、ゆっくりと上昇していく。(魂と魂との間隔は平均で50センチ位)


女の子 :「綺麗・・・」

ホルス :「まあな」

10秒程経って、女の子は中心まで飛んで行った。そして、中でくるくると回りながら楽しんでいる。

魂は50メートル程上昇した後、船首の方向へ進んで行く。

5分後、もう魂は出てこなくなったので、女の子はホルスの所へ戻った。


女の子は3人に話し掛ける。

女の子 :「さっき、沢山の魂が私に語りかけてくるような、不思議な感じがしました」

    :「私は、何かをしなくてはいけない、今、そんな気がするんです」

    :「トト、アヌビス、来てください」

トト  :「はい」

アヌビス:「すぐに行く」

次の瞬間、トトが女の子の前に一瞬で現れる。

トト  :「お呼びですか?」

女の子が少し驚いて黙っていると、

トト  :「私は、この世界のどんな場所でも一瞬で行く事ができます」「便利でしょう」

トトがそう言い終わる頃、アヌビスが女の子の前に降りてくる。

アヌビス:「待たせたな」


3人は女の子の顔をじっと見ている。

女の子 :「私、皆さんと一緒に行ってもいいです」

    :「まだ、私に何ができるのか分かりませんけど、頑張ります」

トト  :「ありがとうございます」

    :「では早速、と言いたい所ですが、今のままでは恐らく辿り着けないでしょう」

女の子 :「やっぱり私の記憶が戻らないとダメなんですか?」

トト  :「いえ、そういう訳ではありません」

    :「私たちがおこなっている事は、ファラオと我々4人だけの話ではないのです」

    :「今は焦らず、ゆっくりと参りましょう」

女の子 :「ところで、私、いつも出歩いていると親が心配するし、学校の宿題とかも・・」

ホルス :「なら、お前の体が2つあればいいのか?」

ホルスはそう言うと、右手を広げ、掌から野球ボール位の赤く光る玉を出した。

ホルス :「これは、この世界のどんな物でも照らす事の出来る光の玉だ」

光の玉は女の子の体の中へ入って行く。すると、女の子の体から影のように もう一人出てきた。

ホルス :「どちらも お前自身だから、どんなに離れていても意思の疎通は可能だ」

    :「但し、もう一人はアンクの力は使えないぞ」

女の子 :「ホルス、ありがとう」

トト  :「では、私は もう行きますね」

ホルス :「行くか」

アヌビス:「私もそろそろ行こう」


女の子はホルスに声を掛ける。

女の子 :「ホルス。さっき船からずっと見てましたよね」

他の2人は下界へ向かう。

女の子 :「やっぱり綺麗だからですか?」「それとも今までにも同じ事があったんですか?」

ホルス :「今回程ではないが、戦争が起こった時にな」

女の子 :「ごめんなさい。私そんなつもりじゃ・・・」

ホルス :「オレは、お前のそんなところは嫌いじゃない」

女の子 :「・・・」「私、もう行きますね」


女の子は、自分の分身と手を繋いで下界へ。家の近くで分身と別れた後、すぐに空へ飛び立って行った。


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