第二話
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女の子は空を自由に飛び回っている。
やがて、女の子は自分に変化が起こっている事に気付く。
「何だろう、この感じ・・・」
女の子は、色んな場所から気配のようなものを感じ取っている。
「この辺かなぁ?」
下ではフリーマーケットが開催されている。
女の子は近くの建物の影へ降りて、ある店の前へ。若い男の人(25歳位)が自作の絵を並べて売っている。
その中の一枚から、膜のようなものが出ているのが見える。描かれているのは女の人だ。(胸から上の絵)
女の子:「この絵、よく見せて貰えませんか?」
男の人:「ごめんね。これは売り物じゃないんだ」
女の子:「私には、この絵から特別な想いが感じられるんです」「宜しければ話して頂けませんか?」
この絵は、男の人が高校生の時、好きだった人の絵を描いたもので、
出来上がった絵を女の人に見せたが、結局何も言って貰えなかった。
卒業後、連絡を取ろうとしても、引っ越したらしく、今何処にいるのかも分からない。もう一度会いたいと思っている。
女の子はトトに心の中で呼び掛ける。
女の子:「すいません、ちょっといいですか?」
トト :「はい。どうされました?」
女の子は今の話をトトにする。
トト :「写真や、本人に似た絵を当人が見た場合、稀に魂の一部が移る事があります」「早い話、魂も迷ってしまうんですね」
:「写真を撮られると魂を抜かれるという話がありますが、まるっきり嘘でもないのです」
女の子:「そうなんですかぁ?」「それで、その人は見付けられるんですか?」
トト :「魂の主が生きていれば可能です」「絵から出ている魂のカケラを切ってみて下さい」
女の子は男の人に話し掛ける。
「もしかしたら、その人、見付かるかも知れません」「ちょっと絵を見せて下さい」
女の子は絵を受け取り、地面に置く。アンクをハサミに変え、魂のカケラを切り取った。
男の人は、変わった行動をとる女の子を じっと見ている。勿論、ハサミは見えていない。
魂のカケラは光るビー玉のようになったが、ハサミには吸収されず、ある方向にゆっくりと動いている。(秒速2センチ位)
女の子:「今、切りました」
トト :「切り取られた魂のカケラは、元々迷って絵に入っただけなので、これから主の所へ向かい、1つになろうとします」
:「掴んでみて下さい」
女の子:「掴みました」
トト :「魂のカケラが行こうとする先が分かりますか?」
女の子:「何となく分かります」
トト :「はい。いいですね。その調子です」
女の子は絵を男の人に返す。
女の子:「その人に会ったら、あなたの事を伝えます」「絵を見せて戴いて、ありがとうございました」
男の人:「これ、持って行ってくれないか?」「何故だか、そうするのが一番いい気がする」
女の子は絵を受け取り、建物の影から飛び立った。
しばらく経ってから、女の子はトトに呼び掛ける。
女の子:「かなり遠くに行こうとしている気がするんですけど、もっと速く飛べませんか?」(現在、時速400キロ位)
トト :「飛べますよ」
:「皆さん、あなたに合わせて遅く飛んでいたんです。更に意識を集中して念じ続ければ、どんどん速度は増していきます」
:「でも今は、慣れるまで その位でいいと思います。疲れたら飛べなくなってしまいますよ?」
:「ちなみに、光の速度まで速くなりますから、地球の裏側でも あっという間ですわ」
東京から移動して数時間、九州に到着。時刻は夕方。女の子は あるアパートの部屋の前にいる。
女の子がチャイムを押すと、女の人が出てきた。
女の子:「初めまして。私、コレを届けに来ました」
女の人は渡された絵を持って、見つめている。女の子が右手を開くと、魂のカケラが女の人の体に入って行く。(秒速20センチ位で)
すると、女の子には、女の人の雰囲気が僅かに変わったように思えた。
女の人:「そうですか。わざわざ ありがとうございました」「お礼に お茶でもどうですか?」
女の子:「いいえ、私、もう帰らないといけないんです」「失礼します」
アパートの上空。女の子はトトに呼び掛ける。
女の子:「遅くなっちゃいましたけど、今から帰ります」
トト :「でしたら、そのまま上に行って下さい。すぐに戻れますよ」
女の子は昇っていく。
女の子:「あの2人は これからどうなると思いますか?」
トト :「それは私にも分かりません」
:「あなたは、どうなって欲しいのですか?」
女の子:「私は思うんです。男の人の想いに、女の人の魂が引かれたのかなぁ・・・なんて。だからきっと うまくいくんじゃないかと」
トト :「そうなるといいですね」
空にある 透明な壁を通り抜ける。
女の子:「あれっ、こんなに近いの?」
船との距離は20メートル程。中に入ると、3人が待っていた。
トト :「お疲れ様でした」「如何でしたか?」
女の子 :「でも私、何も集めてないですよ」
ホルス :「いや、トトから話は聞いてる。オレはお前に期待してる」
アヌビス:「私もだ。これから面白くなりそうだな」
女の子 :「私、家に帰りますから」「明日、また来ます」
トト :「では、私が途中まで送ります」
女の子は2人に挨拶し、トトに付いて下界に下りる。
女の子 :「ここまで来れば分かります」
トト :「それでは、また明日」「おやすみなさい」
女の子は家の近くに降りて、家の中へ。そして女の子の部屋。
部屋の中に猫が一匹居る。この猫は女の子が幼い頃に どこからともなくやって来て、そのまま居着いてしまった。
女の子と猫の目が合う。すると、
猫 :「もしや、記憶が戻ったのですか?」
女の子が黙っていると、猫は徐々に人間の姿に変わる。
猫 :「私の名はバステト。お忘れですか?」
女の子 :「ごめんなさい」「そう言われても、私にはよく分からなくて・・・」
バステト:「そうですか、まだ その時ではないのかも知れませんね」
そう言い終わると、また猫の姿に戻り、部屋から出て行った。
女の子はトトに聞こうかと思ったが、まず、今日起こった事を考えてみることにした。