第十三話
---<第十三話>-----------------------------------------------------
次の日の朝。
女の子がベッドの中で目を覚ますと、目の前にピンポン玉位の光る玉が現れた。猫の姿のバステトも目を覚ます。
女の子が体を起こして焦点を合わせると、声が聞こえてくる。
ネイピア:「やあ、元気かな?」
:「ちょっとした仕事があるんだけど、私に付き合ってくれない?」
:「場所は『芥の海』。あなたへの報酬は、そこで手に入る物 全てだよ」
:「OKなら、この伝言玉を外の世界に転送してね」
:「7秒以内に決めてくれると嬉しいな」
女の子は一瞬、少し機嫌が悪そうな顔をしたが、目を閉じて3秒程考えた後、光る玉を転送させた。
バステト:「宜しいのですか?」
:「『芥の海』と呼ばれる場所には獰猛な巨大生物が住み着いています」
:「アトゥムでさえ、この世界の材料を探しに行き、何度も手負いになったと聞いています」
女の子 :「私、試されていますよね」
:「でも、こうするのが一番良い気がするんです」
バステト:「イシス、あなたには、何か特別な魅力を感じます」
:「だから皆様、あなたに関わろうとするのだと思います」
・・・7時30分頃・・・
船の前に皆が集まっている。(船は最初の場所にある)
アヌビス:「悪いが、私は役に立てそうにない」
ホルス :「オレは行く、母さん、連れてってくれ」
トト :「私は行きますわ」
バステト:「私は此処に残ります」
:「イシスと私は、お互い引き合う力がありますので、もしもの時は私の所に瞬間移動できるでしょう」
女の子 :「分かりました」
:「じゃあ皆、出発しましょう」
:「ホルス、アンクを貸して」
ホルスは首から下げているアンクを女の子に渡す。
女の子がアンクを握ると、手から光が溢れ出す。5秒後。
女の子 :「これで大丈夫。ホルスも外の世界に行けるようになったよ」
ホルス :「母さん、ありがとう」
3人が船に乗ると、船全体が黒い球体に包まれる。そして急速に小さくなり、ビー玉位の大きさになると、姿を消した。
・・・外の世界・・・
船が現れる。全員船首に居る。(全員、体から少し光を発している)
ホルス :「ん?オレ達の世界は何処だ?」
トト :「多くの管理者は入り口を隠しています」
:「世界の数は100万以上あると言われていますが、共通した取決めなどはありません」
:「それ故、世界を守る技術も、奪う技術も発達しているのです」
女の子 :「ところで、『芥の海』ってどの方向ですか?」
トト :「『3の世界』と『5の世界』の延長上にあるそうですが、私も詳しい事は・・・」
アトゥム:「我が案内しよう」
3人の前に『アトゥムの影』が現れる。
女の子 :「ありがとう。宜しくお願いしますね」
女の子は掌から、地上絵のシャチ4体を実物大で出現させる。それは金色に輝き、船の周りを泳いでいる。
すると船は、まるで海の上にいるかのように揺れだし、前に進む。
女の子 :「ここでは、魂のカケラを使わないと自由に動けないんですね」
トト :「はい。命の源ですから」「外の世界では我々の力の全てが制限されます」
:「ですので、魂のカケラを『お金』として流通させる取決めをしている世界も沢山あります」
:「恐らく『芥の海』に行くのは、魂のカケラを集める為」
:「しかし、それは巨大生物の餌でもあるので、見張り役も退治役も必要なんです」
女の子 :「巨大生物ってどのくらいあるの?」
トト :「小さい物で1万キロメートル、大きい物は太陽程とも、銀河程あるとも聞きますわ」
女の子 :「えっ、それって・・」
トト :「はい。決まった大きさがある訳ではないのでしょうね」
:「だから皆、割に合わないからと近付かないのです」
ホルス :「それにしても、ずっと真っ暗だなぁ」
女の子 :「近くにいる魂が一瞬光る事があるから、探してみて」
アトゥム:「ここでは、無数の魂が安楽の地を求めて彷徨い、沢山の世界を永い時間を掛けて旅している」
トト :「1つ見付けました」
トトはそう言って、掌に仕舞う。
トト :「魂は私が預かりますわ」
ホルスや女の子も魂を見付け、トトに渡す。『アトゥムの影』は航海に集中している。
・・・1時間後・・・
女の子 :「あっ、何か見える」
遠くに光が見える。
トト :「『5の世界』に着いたみたいですね」
トトがそう言い終わると、遠くの光は高速で此方に近付き、3人の前で人の姿に変わる。
現れたのは2人。帽子を被ったネイピアと、小柄な女の子が居る。その子の歳は女の子と同じくらい。気が弱そうな感じを受ける。
女の子 :「ネイピア。こんにちは」
ネイピア:「そろそろ来る頃だと思ったよ」
:「この子は『r141(アールイチヨンイチ)』、『4の世界』の管理者」
:「ウチと協定を結んでるから、私の子分みたいなもんだよ」
r141:「初めましてです」
:「『r141』って言いますぅ」
女の子 :「ねえ、『アル』って呼んでもいい?」
ネイピア:「いいよ」
r141:「あっ、はい。構いません」
ネイピア:「じゃあ、出発だね」
:「私達は船が襲われないように左右を見張ってるから」
ネイピアとアルは左右、船の真ん中辺りに瞬間移動した。
・・・3時間後・・・
ネイピアとアルは船首に移動する。
ネイピア:「着いたよ、ここが『芥の海』」
:「世界の至る所から色んな物が集まって来るんだ」
:「とぉっても危険な所だから、奥には行かないよ」
前を見ると、遠くのあちらこちらで何かが光ったり消えたりしている。
トト :「取り敢えず、お昼にしませんか?」
女の子 :「ネイピアとアルも一緒にどう?」
ネイピア:「そうだね」
アル :「私、お腹空いてな・・」
ネイピアがアルを睨む。
アル :「私も戴きます」
・・・ダイニングルーム・・・
女の子、ネイピア、アル、アトゥムの影、トト、ホルスの順に座る。
暫くして、侍女たちが食事を運んでくる。そして運び終わり、部屋の隅に移動した。
ネイピア以外、皆、目を閉じている。2秒後。
女の子 :「頂きましょう」
出された食事は何時もと同じではなく、
ネイピアの所にはケーキや菓子類が並び、アルの所にはパンが山のように積まれている。
トト :「私の情報では、『5の世界』の管理者は お菓子好きで、『4の世界』の管理者は大食だと聞いています」
ネイピアはケーキを一口食べる。ネイピアは黙っているが、目の色が変わったように見えた。
女の子 :「ねえ、『1』や『2』、『6』の世界もあるの?」
ネイピア:「『1の世界』は無いよ。外の世界が『1の世界』だと考えられているからね」
:「あと、『6の世界』も無いし、『10』より上は在ったり無かったりするよ」
:「『2』と『5』は古くからあって、『3』と『4』は最近出来たんだよ」
女の子 :「そうなんですか。『2の世界』の管理者って、どんな人なんですか?」
ネイピア:「あなたと同じで、名前を知るだけで能力が使えるよ」
:「その能力を持つ管理者は何人も居るから、その対策として、私達には『真の名前』に仕掛けがあるんだ」
:「『r141』の本当の名前は『√2』だし、私の識別コードには続きがあって、終わりが無いんだよ」
アルは話をしている間、黙々と食べ続けている。
ネイピア:「ところでさ、この料理を用意したの、あなただよね?」
ネイピアがトトを指差す。
トト :「はい。お気に召しましたか?」「私はトトと申します」
ネイピア:「ねえ、イシス」「トトをウチにくれないかな?」
:「こんなの食べた事ないよ」
アル :「私も無いですぅ」
トト :「では、其方へ伺った時に、この秘密をご説明致しましょう」
女の子 :「それなら、いいですよ」
ネイピア:「それじゃあ、この仕事が終わったら案内するね」
食事が終わり、全員船の外に出る。
ホルス :「船はオレが仕舞っておく」
船はみるみる小さくなり、ホルスの掌に納まった。
ネイピア:「今から魂のカケラを集めるけど、やり方は海水から金を集めるのと同じだからね」
:「但し、集めたカケラが多い程、大きな『ケファルス』を呼び寄せるから注意が必要だよ」
アル :「皆さん、私の力を使って下さい」「効果は5時間です」
アルの掌から野球ボール位の黒くて雷を纏った玉が出てきて、皆の掌に吸収される。
ネイピア:「これで襲って来る『ケファルス』を『無』に返すんだ」
女の子 :「無に返せるの?」
ネイピア:「『r141』の力を使えば、魂だって無に返せるよ」「『無』つまり『0の世界』にね」
:「さてと、皆、始めるよ」
トトとアトゥムの影は瞬間移動を繰り返しながら見張りをしている。
ネイピア、アル、女の子、ホルスは思い思いの場所で魂のカケラを集めている。
トト :「イシス、来ましたよ」
女の子がトトの指差す方法を見ると、一瞬だが、そこから光が見えた。
女の子 :「何?もしかして、口?」
女の子はアルから借りている力で掌から雷を纏った黒い矢を出し、それを大きくしながら巨大生物に放つ。
10秒後。巨大生物に命中すると、体全体から光を発し、消える。
女の子 :「こんな生物がいるんだ」
トト :「深海魚の『フクロウナギ』に似ていますね」
ふと、ネイピアの居る方向を見ると、こちらでも退治されていた。
トト :「向こうは『フウセンウナギ』ですね」
:「どちらも大きさは地球位でしょうか」
・・・4時間後・・・
女の子 :「何だか、だんだん増えてきてるような気がするし、大きさも巨大になってきてるね」
ネイピア:「奥からデカいのがやって来てるんだね」「そろそろ引き上げようか・・」
次の瞬間、時間が止まったような感覚に襲われる。
周りを見ると、この辺りにある全ての魂のカケラが強い光を放っている。
そして、何かの力によって全員が、魂のカケラと共に一箇所に集められる。
ネイピア:「あっ、食べられちゃったね」
:「かなりの大物だよ。きっと」
:「でも大丈夫、私達は消化されないから」
すると、周りの光を放っている魂のカケラは次々に消えていく。
女の子 :「アトゥム!」
アトゥムの影が光に包まれたと思ったら、ピンポン玉位の青い玉になってしまった。
ネイピア:「あれぇ、やっぱり、まずいかも・・」
女の子 :「皆、私の所に集まって」
女の子は掌から光の玉を出し、全員を包み込んだ。
・・・地球・・・
バステト:「皆様、どうでした?」
ネイピア:「いやあ、大物過ぎたね」
アル :「死ぬかと思ったですぅ」
女の子 :「『アトゥムの影』が青い玉になったんだけど、元に戻るかなぁ?」
ネイピア:「なるほど、かりそめの体だから一番に消えたんだね」
:「まあ、あの中から脱出は可能だったけど、手ぶらで帰る事になっただろうね」
:「イシスだって、移動の際に、沢山の魂のカケラを消費した筈だよ」
女の子 :「えっ、そうなの?」
女の子は掌から野球ボール位の半透明の膜を出現させる。中では地上絵が泳いでいる。
女の子 :「ホントだ。5000位減ってる」
トト :「大丈夫ですわ。イシスとホルス合わせて、5000万は集まりましたので、十分補充できますわ」
ネイピア:「復活か・・・、しょうがない、手を貸してあげるよ」
アル :「私もやるです」
ネイピア:「でも、これ程大きな力を持った人を復活させるとなると、他に力の元が必要だよ」
女の子 :「これ、使えますか?」
女の子は掌から、オシリスを助けた時に手に入れた黒い玉(ビー玉位)を出した。
ネイピア:「魂のカケラを封印してあるんだね。これなら十分」
:「じゃあ3人で、再生の力を使うよ」
3人は輪になっている。円の中心には、青い玉と黒い玉が浮かんでいる。
3人は目を閉じて、掌から直径20センチ程の金色に輝く玉を出した。
そして、全てが1つになり、光に包まれる。
やがてそれは、人の形に変化して、光の中からアトゥムの影が現れた。
女の子 :「あれっ、・・・」
アル :「失敗ですぅ」
ネイピア:「まあ、こんな事もあるよね。私のせいじゃないから」
アトゥム:「・・・」「我は生きているのか?」
アトゥムの影は女になってしまった。
アトゥム:「我から、以前よりも大きな力を感じる」
ネイピア:「そりゃそうよ、私達の力を分けてあげたんだからね」
アトゥムの影からオーラのような物が出て、アトゥムの影に納まる。
その後、女の子にも、同様にオーラが出て、女の子の体に納まった。
女の子 :「私も何か、大きな力を感じる・・」
ネイピア:「あなた、まさか、・・・」
:「そう。そうなんだ。これ全部、あなたの計算なの?」
女の子 :「いえ、そんなつもりじゃ・・」
ネイピア:「ふふ。やられたね」
:「・・・」
:「それじゃあ、私の世界に行こうか」
:「私が案内してあげるよ」




