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新エジプト神話  作者: 黒紫
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第一話

---<第一話>-----------------------------------------------------

電車の一番前で運転席から見える景色を眺めている女の子。高校一年生、現在夏休み中。

乗り物に乗るのが好きで、たまにバスや電車で遠くへ出掛ける。


女の子が、ふと何かの気配を感じて振り返る。

立っていたのは、女の子と同い年くらいの女の子(目の色が左右で違う)。


手に 身の丈程もある大きなハサミを持って、女の子の体から何かを切り取ろうとしていた。

女の子    :「えっ、何!?」

ハサミの女の子:「お前、オレの姿が見えるのか!?」「・・・」「ちょっと、来い!」

女の子は腕を掴まれる。ハサミの女の子は真上に飛ぶ。女の子は引っ張られ、

ハサミの女の子と共に電車の屋根をすり抜け、あっという間に空へ。

(ハサミは姿を変え、「アンク」となり、首から下がる)


女の子は最初驚いていたが、すぐに冷静になる。

「あのう、何処へ私を連れて行くんですか?」

「船だ。お前に会わせたい奴らがいる。詳しい話はそこでする」「それから、私の名は ホルス だ。さっきは驚かせて悪かったな」


一分後。空にある 透明な壁を通り抜ける。

そこは一面 雲のような白い物に覆われていて、木でできた大きな船が浮かんでいる。

船の長さは40メートル、幅6メートル。大きな櫂が5対ある。


・・・船の中・・・

中は見た目よりも ずっと広くて、明るい。

女の子の歩く先に、2人の女の人が立っている。2人とも20歳くらいに見える。

まず、少し色白で背が高く、どこか品のある 女の人が話し掛けてくる。

「初めまして。わたくしは トト と申します」「宜しくお願いしますね」

続いて、少し日焼けをしたような肌で、ちょっとツンとしている女の人。

「私は アヌビス だ」「宜しくな」


女の子 :「ホルスさんに、トトさん、アヌビスさんですね」

ホルス :「ホルスでいい」

トト  :「トトで構いません」

アヌビス:「アヌビスで構わない」


トト  :「では、早速ですが、私と一緒に来て頂けませんか?お渡ししたい物があります」

     「それから、ホルス。周りの人の記憶を消さずに来たでしょう」「私がやっておきましたから」

女の子はトトに付いて行く。他の2人は付いて来ない。


女の子 :「ちょっと気になったんですけど、この船、中は広いんですね」

トト  :「これは、空間を操るホルスの力を借りています」

女の子 :「そう言えば、ホルスの持っていた大きなハサミは何ですか?」

トト  :「それは後で説明します」


・・・・・


ある部屋に案内される。

トト :「この部屋は今まで誰も使っていなかったんですが、これからは あなたの部屋になります」

部屋の中は綺麗の掃除されており、上等なベッドや調度品が置かれている。

トト :「これを付けて下さい」「私は あなたが真の所有者である事を望みます」

トトは机の上に置いてあるアンクを取り、女の子に渡す。

女の子:「これ、皆さんが付けている物ですよね」

(女の子のは乳白色、ホルスは赤、トトは緑、アヌビスは紫)

女の子は首からアンクを下げる。すると、頭の中にトトの声が聞こえてきた。


トト  :「私の声が聞こえますか?」

女の子 :「はい」

トト  :「では、私の顔を思い浮かべながら、心の中で話してみて下さい」

女の子 :「こう、ですか?」

トト  :「はい。結構です」「・・・」「皆さん、やっと見付かりましたね」

ホルス :「おう、やっとか。4000年は長かったな」

アヌビス:「長かった。これで出発できるのか」「ファラオには私から伝えておこう」


(ここからは口で喋る)

女の子 :「一体どういう事ですか?」

トト  :「あなたには現在記憶がないようですから、簡単にご説明します」

    :「我々は、ファラオと共に船に乗り、魂のカケラを運んでいます」

    :「船の行く先には『裁きの門』があり、その門を抜けると『楽園』と呼ばれる場所に着きます」

    :「航海には、私達4人の力が必要不可欠なのです」

    :「どうか、あなたの お力をお貸し下さい」

女の子 :「私の力?そんなものあるの?」

トト  :「ええ、あります。自分を信じて下さい」

女の子 :「航海って、もう出発するんですか?」「私・・・」

トト  :「いいえ、あなたの返事を待ちます」「そのあいだ、そうですね、私達と一緒に魂のカケラを集めてみませんか?」

    :「ちょっと面白いものをお見せします」「私に付いて来て下さい」


2人は部屋を出て、しばらく歩く。そして、ある部屋の前へ。

トト :「ここは食事の用意をする部屋です」

壁に壁画が描かれている。畑を耕す絵、種を植える絵、麦を刈る絵、パンをこねる絵、パンを焼く絵、その他沢山。

部屋の中央に大きなテーブルが1つ。皿やナイフといった食器類が載っている。しかし、かまどや鍋などの調理器具は置いてない。

女の子は部屋を見渡す。

トト :「ここの絵は全て私が描いたものです」

そこへ侍女3人が部屋に入ってくる。1人は装飾の施された壺を持っている。

侍女が壺の蓋を開けると、中から光の玉が沢山出てきて、壁画に描かれている人物の中へ次々と入って行った。


女の子:「不思議・・・」

描かれている人たちが動き出し、壁画の中で作業を始める。

3分程経って、侍女が器を壁画の近くに持っていくと、壁からパンや肉や魚、飲み物が渡される。

侍女たちは壁から離れ、そして、1人が壺を持つ。光の玉が壺に戻っていく。

トト :「お好きな物があれば言って下さい。作り方の手順が分かれば何でも作れます」

   :「そうそう、もうお昼ですよね。ご一緒しませんか?」


ダイニングルームへ案内される。

この部屋にも壁画があり、楽器を持った人や踊り子などが描かれている。

中に入るとファラオが立っていた。歳は18くらいに見える。(男)

ファラオ:「私は、あなたが来るのをずっと待ち望んでおりました」

    :「どうか、私をお導き下さい」

ファラオは深々と頭を下げた。女の子はしばらく考える。

女の子 :「私でよければ、力になります。でも、少し時間を下さい」

そう言い終わるのを待っていたかのように、ホルスとアヌビスが部屋に入ってくる。


トト  :「皆さんお揃いですので、食事に致しましょう」

テーブルに椅子が5つ。まずトト、続いて向いにホルスが座る。アヌビスはホルスの隣で待っている。

トト  :「こちらです」

女の子はトトの隣に座る。同時にアヌビスも座る。最後に、テーブルの短い辺にファラオが座った。

すぐに侍女たちが食事を運んでくる。そして、運び終わり、侍女たちが部屋の隅に移動する。


みんな 目を閉じている。女の子も その様子を見て目を閉じる。2秒後。

トト  :「頂きましょう」

女の子は並んでいる物を見る。さっき見た物だ。特別豪華という訳でもなく、質素でもない。

女の子はパンを手に取る。温かくて柔らかい。

女の子 :「とてもおいしい」

トト  :「それは良かったですわ」

女の子は他の物も食べてみる。どれも今まで食べた物の中で一番おいしいと感じられた。


食事が終わり、女の子はトトから説明を受けている。

トト :「生ける者の魂というのは いつも同じではありません」

   :「思ったり、考えたりするだけでも変化します」

   :「又、太陽の光や食物などから魂の素を得ると魂は大きくなる事もありますが、その者に魂を治める力が無い場合、魂は小さくなってしまいます」

   :「実際にお見せしますので、外に行きましょう」

2人は船の入り口まで歩く。

トト :「アンクに意識を集中してみて下さい」

女の子は球体に包まれ、少し浮き上がる。

女の子:「きゃぁあ」

女の子は球体の中で回転し、逆さになっている。

トト :「慣れるまで時間が掛かるかも知れませんね」

   :「大きさや形は自由に変えられますから、臨機応変に対応して下さい」

   :「それから、この状態では、私達4人以外には見えませんし、会話を聞かれる事もありません」

   :「もしも、他の人に知られて困るような事が起こったら、私に言って下さい」「記憶を操作します」


・・・・・


女の子はトトの後ろを飛んでいる。トトは住宅街の ある一軒家に入って行った。

屋根をすり抜け、二階の部屋。女の子が机の前に座っていて、ぼんやりと考え事をしている。体からは膜のようなものが出ている。

トト:「自分で自分の事を嫌いになったりすると、魂の一部が自分から離れていきます」「こうなると、もう元には戻りません」

  :「離れた魂は、言わば記憶のようなもので、それ自体には意思はありません」

  :「今は魂の 1つになろうとする力で引っ付いていますが、やがて何処かに行ってしまうか、大抵は、細かくなって散らばって行きます」

  :「その後は植物などに吸収され、それを生き物が食べるといった形で循環しているのです」

トトはアンクをハサミに変え、女の子から切り取る。切り取られた魂のカケラはハサミの真ん中にある 黄色くて丸い石に吸収された。

トト:「ちなみに、このハサミは肉体から離れた魂しか切る事ができませんから安心して下さい」

   「さあ、出ましょうか」


外では、ホルスが待っていた。

ホルス:「次はオレだ」

ホルスと女の子は近くを走っている電車の先頭車両に入る。

ホルス:「魂と肉体は いつも一つだが、人が移動すると魂も一緒に付いて行く」

   :「個人差はあるが、乗り物などでGを感じたり、散歩程度でも本人が変化を楽しんでいる場合は、体から魂の一部が離れてる」

   :「乗り物好きな人の殆どは、この現象を面白さや楽しさだと誤解している」

女の子:「じゃあ私、魂がどんどん小さくなっているんですか?」

ホルス:「普通の人は減った分を食事などで補っている。だから心配ない」

ホルスは景色を眺めている男性から魂のカケラを切り取った。


外に出ると、アヌビスが待っていた。

アヌビス:「最後は私だな」

アヌビスは一軒家に入って行った。家の前に葬儀屋の車が止まっている。

部屋の中は布団が敷かれ、亡くなった人が横たわっている。

アヌビス:「人が死んでも、全ての魂が天に向かうとは限らない」

    :「特に この世に未練を残して死んだ者は、魂が留まり続ける場合がある」

    :「この者の魂は天に向かったが、一部残っている」「私は、残った魂だけを集めている」

女の子 :「天に向かわない魂を見付けた時はどうするんですか?」

アヌビス:「そうある事を その者の魂が望んでいるのなら、私は関与しない」

女の子 :「そんなの・・・」

アヌビス:「これ以上は聞くな、お前のためだ」

アヌビスはハサミで魂のカケラを切り取る。

アヌビス:「出るぞ」


2人は外へ出た。

アヌビス:「後はお前次第だ」

アヌビスはそう言うと何処かへ飛んで行った。

トト  :「どうです?やってみませんか?」

後ろから声を掛けられる。さっきまで何の気配も感じなかったのに、振り向くとトトがいる。

女の子 :「でも、どうやって見付けるんですか?」

トト  :「そうですね。しばらく空の散歩を楽しまれては如何ですか?」

    :「何かありましたら、私を呼んで下さい」

女の子は言われた通りにする事にした。


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