第25話 オレ
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第25話 始まりです。
―俺の意識内―
俺心:体が動かない…俺は死ぬのか?
まぁ…しょうがないか、敵が強すぎるわ!!
この間、冒険始めたばかりで、出会う敵じゃないわ!!
まったく…どうなってんだ!この世界!
ヴァーリは…無事か?
回復スキル無いから…心配だな。
大丈夫か!…俺が作った最強のキャラクターだしな!
さて…そろそろ本格的に体の力が抜けてきた。
ヴァーリ:「マスター!…大丈夫ですか!」
ヴァーリの声が聞こえる。
俺心:すまん!俺、死んだわ
お前なら大丈夫だ、一人でも生きていける。
そう思ったが…走馬灯だろうか?
ヴァーリが泣いていた事を思い出す。
俺心:泣いて欲しくないなぁ…んっ?なんか暖かいな?
腹から股関の辺りで、塗れている感覚を感じる。
俺心:あれか!死ぬときは漏らすってヤツ?
ヤバい…俺の死体(おねしょ中…)って笑えない!
それだけは、断固避けなくては!
――――――――――――
俺:「おねしょって!」
俺は目を開け、上半身が起き上がる!
俺心:ん?ヴァーリが俺にもたれている?
俺:「ヴァーリ!…俺は大丈夫だから!」
そう言って肩を押す!
ヴァーリ:「…」
返事はなく…ドサッと、崩れ落ちる。
俺:「ヴァーリ?…冗談も出来るようになったのか?」
ヴァーリを抱き起こして確認する。
俺:「ヴァーリ!!!」
血塗れで、息が無いヴァーリ!
…俺の体にも血がベッタリと付いている。
俺心:良かった…漏らしてないわ。
始祖:「やはり…後はお前だけだ…さぁ…我に力を示してみよ!」
俺:「はぁ?…俺だけ?…冗談だろ、ミケ!ミル!マザー!」
返事は無く、風の音が耳に染み込んでいく。
血塗れの死体がそれぞれ転がっている。
俺:「よくも!ヴァーリを!…許さん!」
ナタを持ち振り上げ…立ち向かっていく!
俺:「お前なんかにっ!ヴァーリがっ!負けるはずがないんだ!」
一心不乱に斬りつけながら叫ぶ!
始祖:「はぁ…」
溜め息を吐き、手を振る。
俺:「くそっ…なんで攻撃が当たらないんだ?」
ナタを振り回すが、攻撃が当たる感触が無い…
俺:「!」
違和感を感じて辺りを見回すと、血だらけになっている。
俺「これは…俺の?…腕が無い?…はああああああ!?」
俺の腕があった所から噴水のように血が吹き出ている。
痛みは無く、ただ肩の辺りが…熱い!
始祖:「うるさい、静かに…しろ!」
腹をゆっくりと刺す。
俺:「…?」
腹に異物が差し込まれる感覚が広がっていく。
腹の辺りが(ドクン)と脈動して、少しずつ熱くなっていく…
同時に…足の力が抜けていく。
始祖:「つまらん…終わりだ」
スパッと爪を抜きながら…俺を蹴り倒す。
俺をジッと見て…興味が無くなったのか去っていく。
俺:「待ちやが…」
必死に声を出そうとするが、声が出ない。
俺心:目に力が入らない…今度こそ死ぬのか?
俺の視界が段々と狭くなっていき、完全に目をつぶる。
――――――――――
―俺の意識内―
俺:…ヴァーリごめんな…俺のせいだな。
謎の声:「はぁ…だから!お前は弱いんだよ!」
心の奥から!
謎の声:「お前に死なれては俺も困るんだよ!」
脳に伝わる!
謎の声:「俺がアイツを倒してやるよ!…代われ!」
頭に響く!
俺はこの声を知っている…昔からずっと…感じていた。
心の奥…意識のずっと深い所、一番奥にある牢獄。
負の感情が怖くて!…本当に怖いから、俺が作った場所。
そこは…闇よりも暗い…黒く禍々しい炎を閉じ込めている。
その炎は俺の分身…もう一人のオレ。
普段は、何重にも理性で縛り付けて鍵をかけている。
その為…絶対に出ない!…それでも!時折…声は聞こえてくる…
だから俺は、聞こえない…と無理矢理!そう思っていた。
気のせいだ!と…俺の心に!しっかりと刻んでいる。
でも、今回は止められない…止めたくない!と確かに思う。
俺は全身を支配される?…違う!
俺の大切なものを奪うヤツは全て殺す!
もう一人のオレが意識の俺を食う。
黒い炎で俺の意識が焼き消えていく!
俺:「がぁっ!……あぅ…あ、あ」
頭に激痛が走り、何も考えられない。
(キーン…キーン…キーン)
痛みと共に、甲高い音が脳に響く。
それは…音が鳴るたびに、少しずつ俺の意識を消していく。
黒い炎が俺を焼き付くして、俺の意識は完全に消失した。
黒いオレが!俺の全てを奪い同化していく!
――――――――――
オレはムクッと起き上がる。
オレ:「フフフフフフ…ハーハッハッハッハ…ククカカカカ」
何に笑っている訳ではなく、悲しみが溢れて笑っている。
オレ:「だから…お前は、弱いんだよ!…甘いんだ!」
オレは俺に問いかけるように呟く。
始祖:「まだ…生きていたのか雑魚が…とどめだ!」
雷をレーザーのように放つ!!
オレ:「うっとうしい!!」
俺は心の中で…時よ止まれと念じる。
全てが止まる…血の流れも、レーザーも、始祖も、風すらも…
オレ:「俺をザコだと思ってたのか、カスがぁ!!」
怒りにより、言葉が抑えられない。
オレ:「ちっ…痛え!痛え!痛え!くそがぁ!…戻れ!」
俺の…体の時間があっという間に、巻き戻り…俺の傷が無くなる!
オレ:「ふぅ…てめぇのせいだなぁ!!」
傷による興奮が無くなり、少し冷静になる。
オレ:「動け!」
オレは始祖と位置を入れ換えて、時間を動かす。
始祖:「…ぐわぁ!」
レーザーの直撃をくらうが、ダメージはあまりないようだ。
オレ:「そうだよなぁ!てめぇの技だもんよ!…聞かねーよな?」
始祖:「なにをしている!おま…」
オレ心:時間よ止まれ!と念じて…また止まる。
オレ:「ヴァーリ!借りるぞ!」
ヴァーリの死体から剣を剥ぎ取る。
ヴァーリの剣は、最高レベルまで鍛え上げた。
異世界の金属で出来た特別製…普通の腕力では持ては…しない。
しかし、時間停止内では重さの概念すら存在しない!
その為、簡単に扱える剣となる!
オレ:「力を見せろって言ってたな!見せてやるよぉ!」
時間が止まって人形と化した、始祖を斬りつけまくる!
(ザッ…シュッ…スパッ…ズブッ…ザッ…シュッ…サッ…ギリギリ…)
オレ:「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ…動け」
時間が動き出す!
始祖:「……」
斬りまくった、傷口から血が飛び散る。
(プシャー)と音がしながら、ガクガクしている。
止めどなく血が出る様は、置き型花火のようだ。
始祖:「…ぐほぉ…何を…お前は我に何をしている!!」
時間停止中に起きた事は全てが凝縮される。
斬撃!そして…もちろん痛みも!
オレ:「おぉっ!まだ、喋れるのか?てめぇ!」
「俺の理性が嫌がるから、加減してやってるのが駄目か!なら…」
いつの間にか…憎しみは収まっていく。
しかし、殺意による衝動は収まらない。
顔は笑いながら…でも心は泣きながら、続けていく。
同じ事を何回も何回も何回も…!時には、他の事も加えて行う。
俺:「俺の力を、心の奥まで!魂に刻み込んでやる!」
「アハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
―――――――――――
時間を動かす。
オレ:「どうだ?…まだ続けたいか?」
オレは始祖に、分かりきった事を聞く。
始祖:「いえ…貴方様の力は分かりました…」
「クマチャイルに体を返します、申し訳ございません!」
そそくさと帰ろうとする。
オレ心:何回も繰り返し、ようやく分かったか…
オレ:「よし!分かればいいんだ、分かれば!」
「だが…待て、そのまま元に戻したら俺が怪しまれるだろう!」
始祖:「ではどうしたら…」
オレ:「皆が気絶した状態に戻すから、ヴァーリに倒されろ!」
「後は分かるだろう?…言わなくても?」
始祖:「かしこまりました…その様に」
オレ:「さて…オレは!…」
時間を止めて、ヴァーリ、ミケ、ミル、マザーを元に戻す。
ヴァーリだけ、起きるように時間を調節する。
続く
――――――――――――
ルビー:「今回は…何も出来なかったわね」
マテリアル:「まさか~小刻みに~止めるなんて~」
ルビー:「私達も止められる力って…」
マテリアル:「あの子は~やっぱり~危険かも~?」
ルビー:「もう少し、様子を見ましょう…結論はまだ」
マテリアル:「早い~?そうかしらね~?」
いかがでしたでしょうか?
今回は鬱展開ですね…
やはり悲しい気分になります。
展開上、仕方ないですけどね!
ここまでお読みいただきありがとうございました!