11月04日
11月04日。
それは世間では『いい推しの日』とも呼ばれている。
☆☆☆
私には推しがいる。
その人以外は、絶対に推しを作らないと決めている。
何があろうと、ずっと、その人の推しであるつもりだ。
☆☆☆
その推しは、夜風という名前のバーの、バーテンの瑠である。
私が初めてその店に行った日に話しかけてくれた人だった。
人と話すことが苦手な私は、少し戸惑ったが、その時たまたま持っていた仮面ライダーのパンフレットを見て、意気投合をした。
それから私はそのお店に通い、瑠とたくさん話をした。
学校のことや、仕事のこと、お互いの家族のことまで話すようになった。
瑠とは、それだけ仲良くなることができたと思っている。
所詮は、店員と客の関係でしかないが。
それでも良かった。
会いに行くことが楽しみに、生きることの活力へと変わっていたのだから。
お店のシステムで、一緒に出かけたこともあった。
システムなので決められている中でだが、それでも2人切りで出かけられることが楽しかった。
3軒のお店を梯子して飲んだ。
その後、通常通り、瑠は出勤をし、私は客としてお店に行った。
お店に行っても会話は変わらず。
楽しい。最高の日を過ごすことができた。
☆☆☆
瑠は、お店を卒業してしまった。
最後の日、私は瑠がお酒の中で1番好きな、梅酒と、
ピアスをプレゼントした。
「流石! 俺の推しだね。俺今めっちゃピアス欲しかったんだ!」と喜んでくれた。
私はもう他に推しを作る気はなかった。
瑠が卒業をしようと、私はずっと瑠を推し続けると決めていたから。
今でも瑠はそのピアスをつけてくれている。
私とお揃いのピアスを。