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レベルの概念があるのは僕だけなので、最強無敵の英雄になってみる  作者: アカバコウヨウ
少女と英雄の章

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第九十一話 胡桃と理由

 怪人の目的は人類の殺害。

 怪人はそれ以外に興味なく、ただそれを考えての行動しかしない。

 故に、ある意味怪人の対処は簡単なのだ。


 これが世間で唱えられている通説。

 しかし、胡桃はそれが間違っている事を知っている。

 これは胡桃がまだ幼かった頃の話。


      ●●●


『お姉ちゃん! 助けて、お姉ちゃん!』


 と、必死に手を伸ばしてくるのは妹の唯花ゆいかだ。

 けれど、胡桃はどうすることも出来ない。

 彼女に出来るのは、泣きながら唯花の名を呼ぶことだけだ。


 なぜならば。

 唯花は今まさに怪人に攫われようとしているのだから。


 そして、胡桃の身体も彼女の方へと駆けだせる状態ではない。

 その理由は。


『すまない……本当にすまない。今の僕じゃ、あれには勝てない……君しか助けることができない』


 と、胡桃を脇に抱えながら言ってくるのは男である。

 最強にして正体不明のヒーロー、蒼天ヒーロー『スカイ』。

 そんな彼は胡桃へ何度も、涙を交えた声で何度も言ってくる。


『すまない……すまない、あれは無理だ。この世に存在していいものじゃない……このままじゃみんな――っ』


      ●●●


 胡桃が眼を覚ますと、隣では空が眠っていた。


「…………」


 胡桃は空の寝顔を見ながら、先の夢について考える。


 あの後、胡桃はスカイによって救われ、唯花は怪人に攫われてしまった。

 しかも、怪人が人を攫うという事実は徹底的に隠隠蔽された。

 結果として残されたのは胡桃が生き残り、唯花は死んだという現実。


(スカイが唯花を助けなかったこと、当時は凄く恨んだっけ……)


 だが、今ではそれが仕方なかったことだとわかる。

 彼は確実に助けられる命を優先したのだ。


 スカイは唯花を攫った怪人との力量差を理解。

 このまま挑めば、自分どころか胡桃も殺されてしまう。


 スカイはそう判断したからこそ、泣きながら唯花を見捨てた。

 胡桃が言うのもどうかと思うが、正しい判断だと思う。


 世間からのバッシングの対象となったスカイの行為。

 スカイは最強の座を追われ、引退してしまった。

 けれど胡桃は今ではむしろ、彼の行いを尊敬している。


 胡桃が今恨んでいるとしたら。

 力がなかった自分だ……唯花を助けられず、泣くことしかできなかった自分。


 故に胡桃は空――スカイとどこか似た顔の少年を見ながら思うのだった。

 絶対にスカイの様な、彼を超えるような最強のヒーローになってみせると。

 そして、唯花を救って見せると。


(唯花は死んでなんかいない……絶対に生きてるんだから)


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