第九話 空はスキルを買ってみる
「……らっしゃい」
と、聞こえてくるのは明らかにやる気のない店主の声。
店内はボロボロ、隅にはクモの巣が張られてしまっている。
空がお狐様に連れてこられたのは、明らかにヤバそうな店だった。
(どうしよう……僕の本能がこの店で買い物しちゃけないと、そう告げている)
空としてはそっこうで店から出て、別の店をみたい。
けれど、それをすると案内してくれたシャーリィに悪い感が半端ない。
(仕方ない。シャーリィの顔を立てて、少し店内を見回るか)
と、入って早々そんなことを考えたのが悪かったに違いない。
「クー! その顔、ダメな店に案内されたと思ってるな!」
シャーリィである。
彼女はぷくっと頬を膨らませ、続けて言ってくる。
「この店はボロくて臭くて、店主もやる気ないけど、売ってるものはまともだ! 獣人にも差別しないで物を売ってくれるいい店なんだ! 見た目が最悪なだ――もご」
「う、うちの子がすみません!」
空は咄嗟に店主に向け、そんなことを言う。
なぜならば、店主が凄まじい眼光でこちらを睨んでいたからだ。
(うぅ……本当にそんなにいい店なら、これが原因で出禁になったら最悪だ)
と、空が今後に対する心配をしていると。
「ぷはっ! クー! いきなり何するんだ! びっくりしたぞ!」
シャーリィは空に向きなおりながら、そんなことを言ってくる。
だが。
「…………」
(いや、いきなりそんなことを言うから、ビックリしたのは僕の方なんだけどね)
その後。
空はシャーリィに『そういうことを言うときは、本人の前では言ってはいけない』ということを、しっかり言って聞かせるのだった。