第八十七話 空と風紀委員のお仕事②
「空……今のはおまえがやったのかしらぁ?」
と、言ってくるのは氷菓である。
空としてはなるべくごまかしたいところだ。
けれど、氷菓は空が何か言う前に、再び言ってくる。
「さっきも言ったように、聞かれたくないことなら聞かないわ。その代わりに答えなさい……おまえ、私の援護は必要?」
「いえ、大丈夫です。氷菓さんは胡桃と下がっていてください」
「だったら、私達はお言葉に甘えて下がらせてもらうわ……か弱い女性だもの」
「はは……冗談を」
「ちょっと! 二人だけで話を進めないでよね!」
と、言ってくるのは胡桃である。
彼女は氷菓に襟首掴まれた状態で、空へと言ってくる。
「あたしも戦うわ! 一人でやるより二人でやった方が確実なんだからね!」
「いや、今回は下がっていて。それにこれは胡桃が風紀委員に入ってから、初めて対処する事件だ」
「だから何よ! あたしだって華々しく初陣を――」
「一回目は見学してほしいってこと、これからの勉強のためにも」
胡桃はいまだ文句を言っている。
しかし、空はそれを無視して氷菓へと言う。
「自分達と、校舎の裏庭へ接する面を守ってください。氷菓さんならできますよね?」
「愚問ね」
と、氷菓が言ったその直後。
胡桃と氷菓を守るように。そして、校舎と裏庭を切り離すかのように。
巨大な氷の壁が現れたのだった。




