第七十三話 空と英雄
空はスケルトンキングの鎧の中に手をつっこみ、そのまま。
「拳技《破砕》!」
スケルトンキングは全身鎧に覆われている。
だが、内側ならばダメージが通るに違いない。
しかし、スケルトンキングはそれでも止まらず、剣を振り下ろしてくる。
だが、もはやそんなものに構っている場合でない。
このチャンスを逃せば終わる。
「っ~~~~~~~~~~!」
空は斬りつけられる痛みに耐え、攻撃を続ける。
ただひたすらに鎧の中に《破砕》を放ちまくる。
狂ったように。
辺りに血を撒き散らしながら。
空は《破砕》を放ち続ける。
その間、空が何度スケルトンキングに斬りつけられたかは覚えていない。
けれど、わかることがある。
それは途中からスケルトンキングは弱り、斬撃の威力がほぼなくなっていったこと。
そして――。
「僕の……勝ちだ」
スケルトンキングはもう姿形もないということ。
あるのは崩れた骨と、スケルトンキングが纏っていた装備のみ。
と、その時。
「なんだ、これ……」
スケルトンキングの灰に変化が起きた。
それはまるで時を巻き戻すかのように、再生を始めたのだ。
『ボスには特殊能力がある』
そんな光景を見て、空の頭に蘇るその言葉。
スケルトンキングは戦闘中、特殊能力らしきものは使わなかった。
だとするならば。
「蘇生……これがスケルトンキングの特殊能力!?」
あと何回蘇生するのか。いや、そもそももう倒せない。
スケルトンキングはそんな強さの敵ではなかった。
「あ……っ……」
そうこうしている間にも、スケルトンキングは完全に蘇生する。
おまけに破壊した盾と、半壊した鎧まで修復されている。
一方の空は満身創痍、もはや動く力すら残って――。
「負けない……僕は負けない! 諦めたり、しない!」
シャーリィのためにも、諦めることだけは出来ない。
たとえ勝ち目がなくても、最後まで戦ってみせる。
と、空が両手剣を拾い、構えた瞬間だった。
「なるほど……なかなかに見込みがある」
ボス部屋入り口の扉が吹き飛び。
そんな女性の声が聞こえてきたのは。




