第七話 空は狐娘とレベルの話をしてみる
「知っての通り、僕はレベルという概念がない国から旅してきた。だから、レベルアップで具体的にどれくらい強くなるのか聞きたいんだけど」
「狐娘族――獣人系種族は人間の社会では奴隷階級。だから、シャーリィは冒険者について、あまり詳しくない」
と、言ってくるシャーリィ。
しかし、彼女は「それでもいいなら」と、言葉を続けてきてくれる。
「個人差はある。だけど基本、レベルが上がると『元の力が、現在の力にどんどん加算されていく』って言われてる!」
「えーっと、それはつまり……」
シャーリィが言っていることをわかりやすくすると、こうに違いない。
『レベルなしの時の身体能力』が、レベルが上がる度に加算されていくのだ。
例えば。
『レベルなし』の身体能力を1とする場合。
レベル1になれば『レベルなしの身体能力が、現在の力に加算』されるので――1+1で2。
レベル2になった場合も同様。
レベル1の身体能力に、『レベルなしの身体能力が加算』されるので――2+1で3。
ということである。
空はこれを念のためシャーリィに聞いてみると。
「数字は難しい! でも多分、そういうことだ! クーが言ってるんだから、間違ってるはずがない!」
とのことである。
それにしても。
(となると、今の僕は常人の三倍近い身体能力を持っているのか……確かレベルって、マックス10まであるんだよな)
レベル10。
かつてシャーリィから。
『確認されているマックスレベルは、英雄アルハザードのレベル6だ! レベルはそんな簡単に上がるものじゃない! 天才でもレベル4がいいところなんだ!』
と言っていた。
しかし、空としてはやはりレベル10を目指してみたい。
それにシャーリィはこうも言っていた。
『クーのレベルの上がり方は凄い! 異常なんだって、酒場の冒険者の奴らが褒めてたぞ!』
空が特殊なのか。
それとも、地球人がレベルの上がりやすい種族だからなのかは不明だ。
けれど。
(常人よりレベルが上がりやすいなら、レベル10を目指せるかもしれない。この世界で最強のレベル10になって、僕は地球で――)
平和に暮らす人々を、怪人から守る理想のヒーローになりたい。
「よしっ!」
「?」
と、シャーリィが首を傾げるなか。
空はこうして、決意を新たにするのだった。