第六百八話 空と世界④
「幸せ者すぎるな、僕は」
早く戦いたい。
この世界の人々のためにも。
そして、助けに来てくれた異世界の人々のためにも。
「あ、穴が空いてる! クーのお腹に穴が空いてる! リーシャ! 早くしないとクーが死んじゃう!」
と、いつのまにやら、空の真横でわたわた跳ねているシャーリィ。
そして。
「大丈夫です! これくらいの怪我なら、回復魔法と勇者の力を合わせれば――」
と、言ってくるリーシャ。
彼女は片方の手で空の手を握り、もう片方の手を傷の上へと翳してくる。
すると。
猛烈な勢いで塞ぎだす空の腹の穴。
そして、全身にみなぎって来る凄まじい力。
(リーシャの回復魔法。それと、リーシャと接触したことによる勇者ブーストの本領)
相変わらず凄まじいものがある。
現在の空は骸骨竜の攻撃を喰らう前よりも、万全のコンディションに違いない。
「シャーリィ、異世界で別れた時みんなに伝えてくれてありがとう。それにリーシャ、僕の為にみんなを集めてくれてありがとう」
「シャーリィは出来る狐だ! クーのためだったら、なんだってするんだ!」
「わたしもです、クウ様。わたしもクウ様のためなら、なんだって……ですから、クウ様がお礼を言う必要なんてありません!」
と、順に言ってくるシャーリィとリーシャ。
空はゆっくりと頷いたのち、立ち上がる。
「そろそろ終わりにしよう、なにもかも」
言って、空は視線を前へと向けるのだった。
骸骨竜と無数の異世界人が戦う戦場へと。




