第六百五話 空と世界
(あの時試しておけばよかった……あとからそんな後悔をすることだけは、絶対にだめだ)
と、空は右手に剣を作り出し。
ゆっくりと、構えを取る。
その直後。
これまで以上の速度で、つっこんで来る骸骨竜。
きっと、空の雰囲気から何かを感じ取ったに違いない。
「…………」
気にする必要はない。
今この時に限っては、空が相手をするのは骸骨竜ではない。
目の前の骸骨竜は、ただ気を散らすだけの存在にすぎない。
空はそんな事を考えながら、ゆっくりと瞼を閉じる。
次いで、自らの内側に全ての意識を向ける。
視界に映るのは闇。
聞こえてくる音すらも感じない。
(失敗したらやばいんだろうけど……なんだか、失敗する気にはなれないんだよね)
まぁ、成功してもやばいといえばやばいが。
と、空は苦笑いした後。
これまで培ってきた全て。
その全てを込め――。
「剣技 《断空》」
間違いなく渾身。
申し分のない究極の一撃。
それは空を切る。
直後。
開いた空の視界に映って来るのは、骸骨竜の槍の様な尻尾。
それは空の腹部へと直撃。
空は腹部を貫かれた後。
そのままの勢いで、後方の瓦礫へと吹っ飛ばされるのだった。




