第六百四話 空は竜と戦ってみる③
「今回も相打ち……って、ところですかね?」
直後、聞こえてきたのは骸骨竜の悲鳴のような咆哮。
奴がそんな声を上げた理由。
それは簡単だ。
吹っ飛ばされる間際。
空は折れた剣を、骸骨竜の額付近に全力で突き刺したのだ。
(反応から見るに、かなりのダメージを受けたみたいだけど……問題は)
と、考えている間にも、突き刺した剣は勝手に抜け落ちてしまう。
骸骨竜の傷が回復し、押し出されてしまったに違いない。
完全なるジリ貧だ。
このまま続ければ、空は必ず負ける。
となれば。
(奥の手を使うしかない……か)
そもそも成功するかわからない。
成功したとしても、この世界に多大な影響をもたらしてしまう。
けれど。
(失敗を恐れて……後の影響を恐れて、このままこの怪人と正面から戦い続けて――結果、僕の体力が尽きて戦闘不能)
そんなことになれば、笑い話にもならない。
この怪人を野放しにすることだけは、絶対に避けなければならない。
(あの時試しておけばよかった……あとからそんな後悔をすることだけは、絶対にだめだ)
と、空は右手に再び剣を作り出す。
そして、ゆっくりと構えを取るのだった。




