第六百三話 空は竜と戦ってみる②
「拳技 《破砕》!」
と、空が全力の攻撃を繰り出した。
その直後。
空はとんでもないミスをしたことに、気がついてしまう。
空は視界の端に捉えてしまったのだ。
槍の様に鋭い骸骨竜の尻尾。
それが、空の腹部目がけて迫って来るのを。
要するにカウンターだ。
骸骨竜は空の攻撃を全て読み切り、空へと致命傷を与える気に違いない。
そして、空はそれにまんまとかかってしまったというわけだ。
(っ――まずい、もう避けられない!)
それでも直撃だけは避けなければならない。
と、空は全力で身をよじる。
「ぐっ」
感じたのは脇腹の肉を抉り取るような感覚。
骸骨竜の尻尾によるものだ。
直撃しなかっただけ、まだいい。
しかし、空の身体は痛みによってわずかに硬直してしまう。
瞬間――。
「――っ!?」
再び感じたのは、視界が明滅するほどの凄まじい衝撃。
骸骨竜の腕による薙ぎ払いが、空の頭部に直撃したのだ。
…………。
………………。
……………………。
時間にして、僅か数秒にも満たないに違いない意識の喪失。
その後に空は目を開く。
最初に見えて来たのは、やや離れた位置に居る骸骨竜。
空は先の一撃で、吹っ飛ばされたに違いない。
(痛っ……結構、効いたなこれ)
と、空はそんな事を考えながら、なんとか立ち上がる。
そして、骸骨竜を見ながら言う。
「今回も相打ち……って、ところですかね?」
直後。
聞こえて来たのは、骸骨竜の悲鳴のような咆哮だった。




