第五百九十九話 空と竜③
「魔法 《ファイア》!」
狙うは骸骨竜の口の中。
そこに見える闇色の炎だ。
(あれほどの威力の炎。解き放つ前に、口の中で爆発させたら相当のダメージがあるはず……そう考えていたんだけど)
やはり、ことはそう上手くいかない。
空が魔法を放つよりも早く。
骸骨竜が闇色の炎を、解き放ったのだ。
そして、それにやや遅れて発動する空の魔法。
結果は――。
空の視界を染め上げる爆炎。
猛烈な速度で後方へ吹き飛ぶ身体。
「ぐはっ」
直後、背中に感じたのは猛烈な痛み。
そして、口から出る血。
吹っ飛んだ勢いそのままに、瓦礫にでもぶち当たったに違いない。
なんにせよ、結構なダメージだ。
(あいつの攻撃が直撃しなかっただけ、まだいいとは思うけど……)
それでも、自らの魔法の一部。
さらに、骸骨竜の攻撃の一部をくらってしまった事実は変わらない。
とはいえ――。
と、空はそんな事を考えながら、なんとか立ち上がる。
遠く、空と同じように吹っ飛ばされた骸骨竜。
半ば瓦礫に埋もれている奴を見ながら、言うのだった。
「中々のダメージを受けたのは、僕だけじゃない」




