第五百九十八話 空と竜②
「剣技 《一閃》」
骸骨竜の背中。
そこへ渾身の一撃を叩き込む。
だがしかし。
(っ……なんて速さだ)
現在、空の目の前にある光景。
それは簡単だ。
空の攻撃の瞬間に合わせ、猛烈な速度で振り返った骸骨竜。
そして、奴が鋭い爪を使って、空の斬撃を――空の剣を受け止めている姿。
だからなんだ。
速さがほぼ互角ならば、次に比べるべきもの。
それは決まりきっている。
「っ……はぁあああああああああああああああああああああああああああっ!」
と、空は剣に全力を込める。
無論、骸骨竜の爪を押しのけ、その身に刃を届かせるため。
しかし。
速さだけではなく、力も拮抗してしまっている。
空がどれだけ力を込めても、空の腕と剣が震えるばかりで、一行に前へと進まない。
けれど、押されるわけではない。
(骸骨竜も相当の力を込めているのがわかる。それと、一つわかったことも――)
と、空がそんな事を考えた瞬間。
再び、明滅し始める視界。
「っ!」
見れば、空へと向け開かれた骸骨竜の巨大な口。
その奥に、闇色の光がどんどん凝縮されていっているのだ。
これは間違いない――これまで二回見せた、例の炎による攻撃だ。
(この近距離で……自分を傷つけてでも、僕を倒す気か!?)
改めて理解した。
この怪人はやはり、空を相当に危険視しているに違いない。
とはいえ。
(ここでやられてあげる気は、微塵もないんですけどね)
と、空はもう片方の手を怪人の口――その中に見える闇色の炎をへと翳す。
そして、唱えるのだった。
「魔法 《ファイア》!」




