第五百九十五話 空と胡桃と怪人の王②
「忘れない……忘れるわけない。あいつはずっと前……唯花を攫ったあの怪人で――っ」
と、怯えた様子の胡桃の言葉。
同時、まるで彼女の言葉を遮るように、上空の一点――骸骨竜が居る辺りが明滅する。
途端、感じるのは圧倒的なプレッシャー。
これまでの死神怪人が放っていたそれとは、次元自体が異なっている。
すなわち。
死。
空は咄嗟に動いていた。
胡桃を抱きかかえ、全力で回避行動をとる。
直後。
骸骨竜から放たれたのは、黒い――闇色という言葉が似合う炎。
それらは猛烈な速度で、先ほど空が居た辺りの地面を覆っていく。
(周りにいる怪人も、建物も……何もかもお構いなしの範囲攻撃。それになんて威力だ――あの炎に触れた物が、片っ端から消滅していってる)
高温なのか。
そういう特性なのか。
はたまた、別の何かなのかはわからない。
(でも、あれに触れたらまずい。あの攻撃はフルコンディションの僕にでも、届きうる圧を感じる)
と、空はそんな事を考えながらも、骸骨竜となんとか距離を取り、姿を隠すことに成功。
胡桃を下ろし、そのまま彼女へと言う。
「胡桃……時雨達のところに行って、伝えてきて欲しい事がある。全員、全力でこの場から避難してほしいって」




