第五百九十四話 空と胡桃と怪人の王
「な、なにあれ……黒い靄が集まって、まるで――」
と、上空を指さし言ってくるのは胡桃だ。
空がそちらを見るとそこには――。
地面、瓦礫などなど。
様々な場所から立ち上り始める黒いナニカ。
それらが集まり、どんどん形作られていく姿。
その姿は次第に濃く、ハッキリとしていく。
そうして数秒後、空達の目の前に現れたは。
「全身が骸骨の……ドラゴン?」
同時、空はそいつが放つ雰囲気から、咄嗟に悟ってしまった。
このドラゴンは、新しく現れた怪人などではない。
ドラゴン――一軒家よりも大きなこの骸骨竜。
その正体は、先の死神怪人。
奴がどういう手段でか、変体したものだと。
「っ……あ――」
と、なにやら聞こえてくるのは、苦しそうな声。
見れば隣で、胡桃が胸を抑えてうずくまってしまっている。
空はそんな彼女へ言葉をかける。
「胡桃!? どうしたの、大丈夫!? まさか、あいつになにか――」
「ち、がう……あ、あたしは……あいつを、知って」
「え?」
「忘れない……忘れるわけない。あいつはずっと前……唯花を攫ったあの怪人で――っ」
と、胡桃が言いかけたその時。
上空――骸骨竜が居たあたり。
その一点が、激しく目滅するのだった。




