第五百九十二話 空は死神を倒してみた②
「ありがとう、胡桃」
と、空は胡桃の頭を優しくなでる。
すると彼女は――。
「ふぁ……」
いったいどうしたのか。
胡桃はなにやら恍惚といった様子の表情を浮かべている。
これはきっとアレだ。
死神の怪人を倒せたのが、よほど嬉しいに違いない。
(僕だって、死神怪人を倒せたのは嬉しいしね。時と場所がこんなんじゃなければ、ほんと……ゆっくりとその喜びに浸りたいところなんだけど)
そうはいかない。
なぜならば、まだ何も終わってはいないのだから。
たしかに、死神怪人は倒した。
けれど、まだ周囲には――地下には無数の怪人が残っているのだ。
空達は今から、それらを相手しなければならない。
つまり、もうひと頑張りということだ。
と、空がそんなことを考えたその時。
「ね、ねぇ空……その、頭を撫でてくれるのはう、うれ、うれれれ――っ! あぁもう!」
と、空の手をがしっとホールド。
自らの頭の上から退けてくるのは胡桃だ。
彼女はそのまま空へと言ってくる。
「と、とにかく! そういうことするなら、あとでしなさいよ! あんたが呼んでくれるならその……へ、部屋とかだって行くんだから! 夜に!」
「え、えっと、どういうこと?」
「う、うるさいわね! バカ! とにかくよ、とにかく! あれどうするのよ!? まさかここに放置するつもりじゃないでしょうね!」
と、何故か顔が真っ赤な胡桃。
そんな彼女が指さす方向にあったもの。
それは――。
死神怪人の胴体から下。
上半身を失ったことにより、力なく倒れ伏しているそれだった。




