第五百九十一話 空は死神を倒してみた
「魔法 《ファイア》!」
同時、空の手のひらから放たれる火球。
それは死神怪人だったものを、瞬く間に覆い尽くしていく。
死神の怪人はすでに粉みじんだったため、当然だが。
空の攻撃を、奴が直前で防いだ風にもみられない。
つまり。
(勝った……これで、僕の、僕達の勝ちだ)
結局、奥の手は使わずに済んだのは幸いと言うしかない。
と、空はそんな事を考えながら地面へと着地する。
「倒したの!? ねぇ、倒したの!?」
と、やたら興奮した様子で言ってくるのは胡桃だ。
彼女は空の方へ駆け寄って来ると、言葉を続けてくる。
「さすが空なんだから! 今回は少し苦戦したみたいだけど、あんたなら絶対に倒せるって信じてたんだからね!」
「最終的に倒したのは、たしかに僕だけどさ。そこに至れたのは胡桃のおかげだよ」
「へ、あたしの?」
正直、胡桃が死神怪人の気を引いてくれなければ、かなり危なかった。
状況的に不意打ちせずに、死神怪人の前へ立つのは仕方なかった。
けれど。
やはり無策――《ハイド》でいつ、どうやって隠れるかを考えずに、奴と相対したのは、完全なる失敗としかいえない。
下手をすれば、空はまた死神怪人にやられた可能性すらあるのだから。
(そうしたら時雨、すごい怒ってただろうな)
なんにせよ。
と、空は胡桃の頭を撫でながら、彼女へと言うのだった。
「ありがとう、胡桃」




