第五百八十七話 空と死神と……
「死神の怪人。今日こそ、あなたを倒させてもらう……それが僕の使命だから」
と、空が言った直後。
空の身体から、あらゆる力が抜ける感覚。
間違いない。
これは死神の無効化能力だ。
右手に握られていた片手剣が、いつの間にか消えていることからも確かだ。
となれば、次に来るのは――。
「っ――!」
と、空は全力で身を逸らす。
すると、先ほどまで首があった場所を、高速の何かが通り過ぎる感覚。
目視できなかったが、死神怪人の鎌に違いない。
(相変わらず早いけど、やっぱり経験則で躱すことはできる……だったら!)
作戦の軌道を戻す。
というのも、空はこの怪人への作戦を二つ立てていたのだ。
一つは奥の手かつ、取り返しのつかない作戦。
そのため、なるべくならば使いたくないもの。
もう一つは――。
(魔法 《ハイド》で完璧に姿と気配を消してからの攻撃)
いわゆる、意識外からの一撃。
それにより、この怪人にレベルと勇者の力を加算した一撃を、完璧に入れるというもの。
(それさえ入れば、間違いなく倒せる。だから問題は――)
どうやって、この魔法 《ハイド》を発動させるか。
すなわち、どうやってこの死神怪人の知覚外へと出るか。
「本当は奇襲攻撃をする予定だったんですけど、あなたがこの段階まで現れてくれなかった以上……仕方ない、ですよねっ?」
直後、再び感じた死の気配。
空はそれを躱すべく、全力で身体を動かすのだった。




