第五百八十話 空は時雨に護衛を任せてみる②
「その答えは言うまでもないよね? 時雨だってヒーローなんだから、本当はわかってたんでしょ? 僕が最終的にどういう答えをだすかなんて」
「すみません……兄さん」
と、言ってくる時雨。
彼女は吹っ切れた様子で、空へと言葉を続けてくる。
「少し弱気になってしまいました……えぇ、わかっていますよ――わたし達はヒーローです」
「ヒーローは守りたい人の危機から、目を背けたりなんかしない」
「だってそれは……逃げるよりも辛い事ですから」
きっと、時雨はもう許してくれるに違いない。
空が再び、単独であの死神の怪人の元へ向かう事を。
であるならば。
「時雨」
「わかっていますよ、兄さんの考えは」
と、言ってくる時雨。
彼女は真剣そうで、力強い……先ほどとは全く違う表情で、空へと続けてくる。
「一般人を護衛しながら、他のヒーロー達と合流。その後、わたしはこの地下の比較的安全な場所で、一般人を守りながら待機。その間に――」
「僕が地上の安全を確保する。次の地下基地を見つけるにしても、死神の怪人が存在しているのと、していないのじゃ大きな差があるはずだ」
「でしょうね。まず次の地下基地を見つける間、一般人を護衛しながら地上を歩く難易度……次に、地上を奪還して文明を再建する難易度」
「うん、全てが変わって来る」
何度も言うが、死神怪人だけなのだ。
プロヒーローが、まるでどうにもできない存在は。
さてさて。
さすが時雨と言うべきか。
彼女は空の考えを、全て理解してくれている。
ならば。
空が時雨に聞くべきことは、一つだけ。
それは――。
「この辺りに、地上に出れる通路はある?」




