第五百七十九話 空は時雨に護衛を任せてみる
「僕が倒すよ。今度こそ、あの怪人を僕が倒す……今回は絶対に負けない」
「…………」
と、うつむいてしまう時雨。
しばらくすると、彼女はそのまま空へと言葉を続けてくる。
「兄さんのことは……信じています。誰よりも、兄さんのことは理解している自信もあります」
「うん」
「でも……心配なんです。もし次に兄さんが怪我をしたら……最悪、死んでしまったらとかんがえると……わたしは」
「わかってる。それでも僕は――」
「戦うのを、やめてくれるつもりはないんですか?」
「…………」
これは空のうぬぼれかもしれない。
けれど、あの死神怪人。
奴が他のヒーローに倒せるヴィジョンが、どうにも浮かばないのだ。
空はレベルの概念を手に入れ、他のヒーローと隔絶した力を手に入れた。
そして、あの怪人は他の怪人とは隔絶した力を持っている。
(自分が産まれた意味とか、存在している意味とか、役割とか……そんなの考えた事がなかった。でも最近、僕は思うんだ)
日向空は死神の怪人を、倒すために産まれてきた。
この時の為に――人類を守るために、特殊な異能を手に入れたのではないか。
正直、これが正しいかはわからない。
だが、一つだけわかっていることもある。
「時雨、よく聞いて欲しい。僕にはあの死神の怪人に、対抗しうる力がある」
そして。
今回、空にはあいつを倒せるかもしれない。
そんな作戦もあるのだ。
「それなのに、あいつと戦おうともせずに……守れる人を守らないで逃げるのは、僕の心が許してくれない。きっと、あいつから逃げたら僕は――」
「一生……後悔しますか?」
と、ため息交じりに言ってくる時雨。
空はそんな彼女へと言うのだった。
「その答えは言うまでもないよね? 時雨だってヒーローなんだから、本当はわかってたんでしょ? 僕が最終的にどういう答えをだすかなんて」




