第五百七十八話 空は護衛をしながら、現状把握してみる③
「兄さんが黙ってそういう表情をしている時は、決まって危ないことを考えているときですから」
と、言ってくる時雨。
正直、時雨の言う通りだ。
というのも、空は今まさに考えていたのだ。
(もうそろそろ、白黒つける時がきたのかもな……あの死神の怪人と)
死神の怪人は、怪人たちのボス。
上空の宇宙船の主であるのは、これまでの情報から間違いない。
であるなら、空があの死神の怪人を倒せば、この危機は去るのだ。
もちろん、怪人全てがいなくなるわけではない。
しかし、並みのヒーローでは太刀打ちできない常識外の怪人。
それはあの死神怪人だけ。
(僕があいつを倒せば、他のヒーロー達がきっと怪人たちを押し返せる)
この地下は放棄して逃げるしかない。
逃げても、また見つかる可能性が高い。
それが現状だ。
(例えば、感知能力を持った怪人が産まれたとかだとしたら、もう完全に詰んでるよね?)
悪い方に考えれば、人間に不利なことはいくらでも考えられる。
やはり、現状の対象方は一つしか考えられない。
「時雨、聞いて欲しいんだけど」
「いやです、聞きませんよ」
と、ジトっとした視線で言ってくる時雨。
空はそんな彼女へと言うのだった。
「僕が倒すよ。今度こそ、あの怪人を僕が倒す……今回は絶対に負けない」




