第五百七十七話 空は護衛をしながら、現状把握してみる②
「問題は、その場所まで一般の人たちを護衛できるかどうか。それと、地下に逃げ込む際に、怪人たちをしっかり撒けているかが重要か」
「ということになりますね、地下に基地を作ったとしても、怪人に場所がバレていれば意味がないですから」
と、言ってくる時雨。
彼女はどこか沈んだ様子で、空へと言葉を続けてくる。
「まぁなので、さっき兄さんが言った通りではありますよ……わたし達はだいぶ追い詰められています。なんせ――」
「この地下がどうしてみつかったのか、まるで見当がついてない?」
「はい……正直な話、わたし達が地下に隠れているのは、確実にバレているとは考えていました。しかし、知っての通り日本の地下は下水道地下鉄含め、大分複雑です。にもかかわらず……」
時雨の話によると。
怪人たちはピンポイントで、この地下基地の真上の天井。
そこをぶち抜いて襲撃してきたそうなのだ。
となれば、考えられることは一つ。
怪人たちは、人間が隠れている場所を、完全に把握している。
それも微塵の誤差なしで。
「時雨が追い詰められているって言った意味、よくわかったよ」
仮に怪人を撒き、地下に基地を作ったとする。
けれど、それはまたすぐ怪人にバレる可能性があるのだ。
なぜならば。
この基地の場所が怪人にバレた理由。それがわかっていないのだから。
「…………」
「兄さん……やめてくださいよ」
と、言ってくる時雨。
彼女は心配そうな表情で、空へと続けてくるのだった。
「兄さんが黙ってそういう表情をしている時は、決まって危ないことを考えているときですから」




