第五百七十六話 空は護衛をしながら、現状把握してみる②
「ところで、怪人が攻めてきているのはわかるんだけどさ。地上に出て、次に逃げ込む場所って考えてあるの?」
「…………」
と、うつむいてしまう時雨。
空はそんな彼女へと言う。
「ひょっとして、考えてる暇がないほどに追い詰められて――」
「いえ、考えてはいますよ……ただ、兄さんが考えているニュアンスとは、少し違うかもしれませんが」
「それって、つまりどういうこと?」
「逃げ込む場所――兄さんが聞きたいのは、要するに次の地下基地的な場所があるのか? と、そういうことですよね?」
その通りだ。
さすが時雨、よくわかっている。
しかし、それ以外にニュアンスも何もあるだろうか。
と、空がそんな事を考えていると。
「逃げ込む場所は、今現在はありません」
と、言ってくる時雨。
空はそんな彼女へと言う。
「今現在はって……あぁ、なるほど。そういうことね」
「さすが兄さんです、察しが良くて助かります」
つまり、時雨が言っていることは、こういうことに違いない。
逃げ込む場所はないが、作ることは出来る。
そもそも、この地下だって異能で作った場所なのだ。
スペースさえ確保できれば、隠れる場所などどうとでもなるに違いない。
となると――。
「問題は、その場所まで一般の人たちを護衛できるかどうか。それと、地下に逃げ込む際に、怪人たちをしっかり撒けているかが重要か」




