第五百七十一話 空は最強のヒーローを助けてみる
「僕の妹に、手を……出すなっ!」
空は全力で床を蹴り、怪人たちの方へと走る。
時雨達を取り囲む炎の対処、それは後回しだ。
炎を撒き散らす怪人が居るのだから、先にそれをしても意味はない。
それになにより。
(ヒーローならまず、一般人の心配をしないといけないのはわかってる……でも、時雨にここまでされて、冷静でいられるわけがない!)
と、空はそんな事を考えた後。
魔法 《ブラックスミス》でそれぞれの手に片手剣を作成。
そのまま更に前進――ホールの中央部までたどり着く。
(怪人の数は十、二十……小さいとはいえ、こんな数を時雨は一人でっ)
空の想像より遥かに頑張ってくれたに違いない。
普通のヒーローならば、二対一の段階でやられるのが普通なのだから。
「気がつくのが遅れて、本当にごめん……でも、もう大丈夫だから――あとは全部、僕が片付ける」
魔眼により、ほぼ静止した時間。
空の声は時雨には聞こえないに違いない。
それでも、空は一度だけそう呟き――。
即座に両手の剣を、それぞれ別の方向へと投擲。
狙うは当然、怪人だ。
それらは、凄まじい速度で進み、魔眼の力でほぼ動かない怪人へそれぞれ直撃。
そうして、空は瞬時に二体の怪人を倒す。
けれど、当然終わりではない。
「僕も心に余裕があんまりない……悪いけど、一気に決めさせてもらう!」
一本一本作っていたのでは、間に合わない。
空は自分の周囲に手を翳し、再び《ブラックスミス》を発動。
一気に十本以上の剣を作り出し、床へと突き立てる。
あとは簡単だ。
剣を引き抜いては、怪人へと投げ飛ばし。
両手が埋まっている時は、剣を足で蹴りばし、怪人へと命中させる。
そうして空の体感時間にして数秒。
残りは最後の一体。
空は再び両手に剣を作り出し。
「もう二度と時雨に、他の人達に手は出させない」
と、呟くと同時。
空は両手の剣を、怪人へと投げるのだった。




