第五百六十九話 空と炎と……
「こっちはシャーリィにお任せだ! クーは安心して、クーの世界に戻ればいい!」
と、言ってくるシャーリィ。
空はそんな彼女へ背を向けた後、即座に魔眼を発動。
そのままゲートの向こう――日本へと帰還する。
(っ……見た感じでわかってたけど、凄い燃え方だ。人間がここに入ったら、そう長くは生きられなそうだよね、これ)
とはいえ、レベルの概念を持つ空は別だ。
さらに、彼はダメ押しとばかりに魔眼を使っている。
結果。
空の視界にうつる炎は、止まっているかのように遅い――そのせいか、熱さもそれほど感じない。
彼はそれを確認した後、部屋の中心まで歩く。
そして、そのまま彼は全力で腕を振るう。
すると――。
巻き起こったのは凄まじい風だ。
その風は燃え残っていた家具など、様々なものを吹き飛ばしていく。
けれど当然、空の本命はそれではない。
(よし、ちゃんと炎を消せたみたいでよかった)
とはいえ、まだまだ落ち着けるわけじゃなうい。
まずは状況確認――火事の原因が怪人ならば、倒さなければならない。
そうでなければ、場当たり的な事をしても無意味だ。
(とりあえず、この部屋にずっといてもしょうがない)
と、空は燃えカスになった扉を蹴破り、部屋の外へとでる。
そうして見えて来たのは、やはりと言うべきか。
(酷いな……廊下も似たような状況か)
この様子では地下全体が、燃え盛っている可能性もある。
いったい、ここに何が起きたのか。
少なくとも、空が今日異世界に行く前。
朝の段階では、こんな事にはなっていなかったし、その予兆も――。
「っ!」
間違いない。
また、先ほどと同じ嫌な感覚がした。
厳密に言うならば違う――先ほどよりも強く、より明確な感覚。
ここまでくれば、もう間違いない。
魔法 《サーチ》を使う必要すらない。
「時雨が危ない!」
と、空は全力で駆けだすのだった。
時雨の存在を感じ取った方へと向けて。




