第五百六十五話 空と狐と嫌な予感③
(なんだ、これ……背中に氷を入れられたみたいに、体が震える……ものすごく、嫌な予感がする)
「く、クー! 大丈夫なのか!? お腹が痛いのか!?」
と、言ってくるのはシャーリィ。
彼女はアワアワした様子で、空へと言葉を続けてくる。
「シャーリィ知ってる! クーはきっとお腹を壊したんだ! アイスだ! アイスがいけなかったんだ! 急に冷たい物を食べたから、お腹がびっくりしたんだ……ど、どうしよう! シャーリィ、リーシャをよんで――」
「いや、ちょっと待った」
「で、でも! シャーリィはクーが心配だ! クーのお腹がキューってなってるの見ると、シャーリィのお腹もキューってなってくるんだ!」
「心配してくれてありがとう。でも、本当に大丈夫だよ」
あくまで、体はだが。
どうしようもない悪寒は消えていない。
むしろ、どんどん強くなっていく。
「…………」
空はシャーリィを宥めながら、自らの心に耳を澄ます。
いったい、空はどうしてこんなにも嫌な予感がするのか。
(この世界のことじゃない。この世界に心配なことはもうない――今のこの世界は、それほどに平和になってきてる)
となれば、空の予感は日本から来ている。
真っ先に思い当たるのは死神の怪人だ。
そして。
死神の怪人と結びつく、空の最悪のイメージ。
それは奴に仲間を殺されること。
(まさか……あの怪人に、地下の施設が見つかったのか!?)
以前、怪人が日本をめちゃくちゃにした時。
空は異世界に居て気がつくことが出来なかった。
考えすぎかもしれない。
あれが、トラウマになっているだけかもしれない。
けれど。
(あの時、直感に従っておけば……なんて後悔はしたくない)
それに、空には異能がある。
それさえあれば、すぐに日本の様子を見ることが出来る。
損など何もないのだ。
(念の為に見ておくか)




