第五百五十三話 時雨は意見をまとめてみる③
「では順番に話をしていきたいと思います」
すると、静かに頷いてくれるヒーロー達。
時雨はそんな彼等へと言葉を続ける。
「まず一つ目ですが……こちらは飛ばさせてもらいます。これ以上、掘り下げることもないので」
となると次は決まりきっている。
こちらは、もっとも大事なことだ。
「二つ目――あの怪人の異能にかんしてですが、先日の戦いで一つ気がついたことがあります」
「筋肉で粉砕する以外に弱点があると!?」
と、言ってくるのはプロヒーロー『マッスル』だ。
時雨はそんな彼へと言う。
「筋肉で粉砕できるかについては、おおいに疑問点がありますが……まぁ、弱点の部類に入る話ですよ」
「それはいったい?」
「死神怪人の異能。あれの能力について、より詳細な情報が手に入ったかもしれないと、そういうことですよ――もっとも、これはわたしの予想も入ってきますが」
と、時雨は順に自らの考えを話していく。
それはこんな感じだ。
あの怪人の無効化能力。
あれはきっと、無効化する能力の出力によって、効果範囲が変わる。
例えば。
空の異能の出力が50。
氷菓の異能の出力が50。
時雨の異能の出力が40。
胡桃の異能の出力が10。
であると、仮定する。
この場合、あの怪人は合計出力が100を超える無効化。それを出来ない可能性が高い。
要するに、先の例でいうと。
空50、時雨40、胡桃10。
の場合は100以下のため、まとめて無効化可能。
けれど。
空50、氷菓50、胡桃10。
の場合は100を超えてしまうため、無効化不可能。
といった感じだ。
(まぁ実際、兄さんの出力を数字にしたら、もっと高いでしょうけど)
なぜならば、先日の死神怪人の戦い。
あれにおいて、空と時雨は異能を無効化された。
けれど、胡桃はしっかりと異能を使えていたからだ。
それはつまり。
死神怪人の能力のキャパシティを、オーバーしていたということに他ならない。
(きっと出力の実数値は兄さん60、わたし40。そして、胡桃さんが10か20といった感じですかね)
故にあの時。
あの怪人はキャパシティに収まり、かつ脅威度の高い空と時雨。
その両者の異能を無効化し、胡桃の異能を放置したに違いない。
とにかく。
重要なことをまとめると。
「あの怪人が、強力な異能を複数同時に無効化するのは、不可能だと思われます」




