第五百五十一話 時雨は意見をまとめてみる
時は空が死神の怪人と戦ったから、およそ一週間後の昼。
場所は地下に設けられた会議室。
「もう一度聞きますけど、本当にわたしが進行役でいいんですか? 年齢的に考えて、わたしでは不足かと思いますが」
現在、時雨はプロヒーロー達の前に立っていた。
理由は簡単。
「天使ちゃんは、最強のヒーローなんだから、死神怪人の対策会議進行役は天使ちゃん。こんなの満場一致っしょ?」
と、言ってくるのはヒーロー達の一人。
同時、他のヒーロー達も頷いて来る。
ならば仕方ない。
若輩の身だが、精一杯やらせていただこう。
と、時雨が決意を新たにしたその時。
「それより、私は空くんが気になるかな」
言ってくる一人のヒーロー。
彼女は時雨へと、言葉を続けてくる。
「エンジェルくんには悪いけど、実質最強なのは空くんだよね? その彼がこの会議に参加してないのは、いったいどういうことなのかな?」
「兄さんは別件で出ています……なので、ここにはいません」
「別件? それは死神怪人の対策よりも重要なことなのかな?」
「はい……というより、兄さんはその死神怪人の対策を、今まさにしているところです」
「ほーう」
と、言ってくる彼女。
同時、ざわざわとし始める会議室。
(兄さんを呼んで来いとか言われたら、かなり面倒ですね)
当然だが、時雨はここの面々よりも空を信頼している。
同時、空に対しかなりの期待を抱いている。
空のことだ。
会議に出席してほしいと言われれば、確実に参加するに決まっている。
(でもそれはだめです……兄さんには、兄さんにしか出来ない事をやってもらわないと)
そのために、時雨は空に会議の事を伝えなかったのだ。
などなど、時雨が考えていたその時。
「だったら、空くんを無理に呼ぶ必要はないかな」
と、言ってくるのは先の彼女だ。
そんな彼女は時雨へと言葉を続けてくる。
「実質最強のヒーローである空くんが、そう判断して単独行動。聞こえは悪いけど、彼がそう選択したなら信頼は出来る。うん……悪かったね、もう異論はないよ」
「……わかりました。他に意見のある方はいますか?」
時雨は誰も手を上げない会議室を見回す。
そして、一人思うのだった。
(間違っていましたね。兄さんに期待し、兄さんを信頼しているのは、わたし一人だけじゃないようです)




