第五百五十話 空は二連敗してみた③
「思いつく方法は一つ……か」
「なによ? あの怪人の対策があるなら教えなさいよね!」
と、言ってくるのは胡桃だ。
空はそんな彼女へと言う。
「いや、対策っていうか……」
「なに言い渋ってるのよ! 早く言いなさいよ!」
「ごめん……今思いついた方法は、本当に成功する確証がないんだ。だから、これからあの怪人に対する作戦――対策を立てるにしても、僕の思い付きをその作戦に入れたくない」
正直。
空が思いついた作戦は、成功さえすれば間違いなく怪人を倒せる。
けれど、同時に成功する可能性も未知数なのだ。
(そんな確証のないもの前提……あるいは、そんなものを組み込んだ作戦を立てるのはよくない)
なぜならば。
それが失敗した時に、作戦そのものがおじゃんになるからだ。
「だからなんていうのかな。僕の思い付きの方は、別の作戦を立てた上での保険――そんな感じに思って欲しいんだよね」
「はぁ? なによそれ!」
と、言ってくる胡桃。
彼女はずずっと身を寄せてくると、そのまま空へと言ってくる。
「だったら、事前に練習すればいいじゃない! 出来るかどうか確かめたら、確証が持てるようになるわ!」
「それが無理なんだ」
「無理って、なんでよ?」
「僕の思い付きの作戦は、まず成功確率が少ない。その上、仮に成功したとしたら、この世界の在り方を大分変えてしまう作戦なんだ……しかも、そう易々と元に戻せるような変化でもない」
例えるならば、副作用が強い特効薬。
しかも、その副作用がどこまで出るか未知数なのだ。
そんなリスクがあるもの。
そう易々と練習できるわけがない。
「だからやるなら、ぶっつけ本番ってこと?」
と、そんな胡桃の言う通りだ。
もっとも、それまでの間に出来る限りの準備はするが。
空はそんな事を考えながら、胡桃へと言うのだった。
「時々留守にするかもしれないけど、あんまり心配しないでね」




