第五百四十七話 空は二連敗してみる②
「他のヒーロー達も向かっています……隙をついて逃げますよ、兄さん」
と、言ってくる時雨。
彼女はそのまま空へと言ってくる。
「問題はどうやって逃げるかですけど……と、思ったより早かったみたいですね」
「早いって、なにが――」
と、空が言いかけたその時。
建物の天井を突き破り、はたまた壁を突き破り――。
現れたのは多くのプロヒーローだ。
それぞれ個性的なスーツを纏ったヒーロー達。
彼等はそれと同様、個性的な異能で怪人への攻撃を始める。
この場にはもう、彼等が守るべき一般人はいない。
であるならば、彼らが戦ってくれている理由は――。
「僕の、ため……なのか? 僕が逃げるため、に?」
「兄さん、彼等を助けようとか考えないでくださいよ」
と、言ってくるのは時雨だ。
彼女は空の腕を引きながら、言葉を続けてくる。
「言ったはずです。最後の希望は兄さんだと……ここで兄さんを逃がせるかどうかに、人類の未来がかかっているんです」
「わかってる。もう戦おうなんて、思っていないよ」
「そんな顔しなくても大丈夫ですよ。なんだかんだ、彼等はプロヒーロー――そう簡単にやられたりはしません」
それもわかっている。
だが、どうしても一緒に戦いたいと思ってしまうのだ。
と、空が考えたその時。
「空、時雨! いつまで話してるのよ!」
聞こえてくるのは胡桃の声。
彼女はそのまま空達へと言ってくる。
「あんた達が――特に空が逃げないと、プロヒーロー達も逃げられないんだからね!」
空はそんな彼女へと頷いたのち。
怪人と戦っているプロヒーロー達を見る。
彼等は怪人に対し、防戦一方――完全に押されている。
だがそれでも。
空はそんな彼等へ背を向け、時雨と胡桃へと言うのだった。
「逃げよう、全力で……彼等がヒーロー達が少しでも早く逃げられるように!」




