第五百四十四話 空は死神と再戦してみる④
「これなら戦える……!」
決して、形勢が有利になったわけではない。
だが――。
(戦えるのなら、勝てる可能性だってゼロじゃない。だったら……僕がヒーローである以上、今日ここで――僕がこの怪人を倒す!)
きっと、それこそが空の使命なのだ。
空はこの世界の窮地に、この怪人を倒すために生まれて来たのだ。
(そうだ、倒してみせる……絶対に!)
と、空は地面を蹴りつけ、前へと進む。
決して、いつもほどの速度ではない。
むしろ、異世界の冒険者と比べれば、かなり遅い方でしかない速力。
それでも空は、出せる全速力で怪人へと進む。
怪人の動きをひたすら予測。
迫りくる攻撃を回避――回避、回避。
少しでも隙があれば再び前進。
その過程で身体中に傷が出来るが無視。
(前へ、前へ……あの怪人に攻撃を入れるまで!)
時間にして三十秒。
空は二百以上の攻撃を躱し、ゆっくりと前へと進む。
そしてついに――。
「入った……僕の間合いだ!」
空は死神の怪人。
その首へと狙いを定めると。
「剣技 《一閃》!」
技能は使えずとも。
体に染み込んだその技を、完璧に再現するのだった。




