第五十四話 空と初めてのダンジョン⑤
突如空を襲ったのは、平衡感覚を完全に失うほど大きな揺れ。
そして、床が崩れる大きな音と浮遊感。
「っ……」
空は気がつくと、仰向けに倒れ天井を見上げていた。
その天井には大穴が空いており、その先には先ほどまで居た階層の天井が見える。
(かなり遠くに見えるな。となると、大分落とされたか……いや、なにかおかしくないか)
空は大穴の先に見える天井を見ながら考える。
このダンジョンは全二階層で構成されている。
そうである以上、空が居るのは二階に違いないのだが。
(穴の向こうに……もう一つ穴が見える?)
つまり、空の眼は現在、三つの天井をとらえているのだ。
空が落ちてきた第一階層の天井。続いて第二階層の天井……最後に、現在居るフロアの天井。
(床が抜けて、僕は二階層分落下したのか? だとしたらここは第三――)
と、ここで空はシャーリィの声が聞こえないことに気が付く。
彼はすぐさま立ち上がり、周囲を探す。
「シャーリィ! どこだ、シャーリィ!」
しかし、返事はない。
それでも空がシャーリィの名を呼び続け、周囲を探すと。
「シャーリィ!」
シャーリィが居た。
大きな岩に片足を挟まれ、意識を失っているシャーリィが。




