第五十三話 空と初めてのダンジョン④
「剣技《一閃》!」
空が放った攻撃。
それは当たればケイブスパイダーを、確実に両断していたに違いない。
けれど。
「っ……なるほど、さっきの考えは訂正しますよ。スケルトンやトレントと違って、頭もいい」
なんと、ケイブスパイダーは空中で粘性の糸を放ち、回避行動をとったのである。
結果、ケイブスパイダーは命を繋ぎ、今もこうして空を複数の眼で睨んできている。
だがしかし。
(この勝負、僕の勝ちだ)
油断などではない。
なんせ、ケイブスパイダーは空の攻撃を、完全に回避してきれていなかったのだから。
現在、ケイブスパイダーの足は五本――左の足は三本斬り飛ばされている。
(この状態じゃさっきみたいに、縦横無尽に跳ねまわることは絶対にできない。気をつけるのは粘弾と、粘糸による移動……)
どちらも今の空ならば、十分対応してケイブスパイダーに斬り込める。
と、空はそう判断。彼はそのまま剣を構え、再びケイブスパイダーへ向け走り――。
「っ――!?」
始めようとした瞬間。
空の視界が大きく歪む。
平衡感覚の消失。
それはもはや立っていられるレベルではない。
(なんだ……これ!? まさか毒……いや、それはない! ケイブスパイダーに毒なんてない)
ならばこれはいったい。
と、空が焦った頭でそこまで考えた直後。
「クー! 地震だ! このままじゃ危ない! 一回ケイブスパイダーから離れろ!」
聞こえてくるシャーリィの声。
空がその指示に従い、ケイブスパイダーを魔法で牽制しつつ距離を取るのと。
空とシャーリィ、そしてケイブスパイダー。
二人と一体が居る付近の床。その一帯全てが崩落したのは、ほぼ同時だった。




